何のための板?

波板、木板

 増殖池の中には、たくさんの波板が無造作に投げ込まれていました。漏水対策として池の周囲に打ち込んだ波板の切れ端と思われます。
 私は、幼生が直射日光を避けて隠れるためのシェルターとして、人為的に投げ込まれたものだと考えました。

 波板だけでなく、木の板も多数投げ込まれていました。なにやら、工事のときに余った端材が、皆、池に投げ込まれてるという感じ。

 後になって、増殖池に関する報告書を読んだところ、やはり、これらの板は目的を持って池の中に設置されていることがわかりました。
 ひとつは、やはりシェルターとしての目的です。繁殖期に池の中でメスを待つオス達の隠れ家としても、重要な役割を果たしているそうです。
 次に、産卵床としての目的です。実際に、これらの板の裏側に卵のうを生みつけた例が報告されていました。

木の枝

 板状のものだけでなく、木の枝も多数投げ込まれていました。
 池の周囲が緑豊かですから、自然に入った枝もあるでしょうが、多くは産卵床として人為的に投げ込まれたものようです。

踏み石

 人間が池の中を観察する際のステップとして、ブロックと木の板で組まれた踏み石が設置されていました。
 踏み石の下には生き物が入り込める隙間が出来るよう工夫されていて、上述の板と同様に、シェルターの役割を期待して設計されたものだと思います。

 波板、木板、枝、ステップ。
 ホクリクサンショウウオの生態を研究した上での工夫が、池の中に投げ込まれたこれらの品に凝らされていると感じました。

廃棄物の有効活用について

 廃棄物処理法の改正により、工事現場で発生した廃棄物の適正処理がより厳しく求められるようになりました。例えば、従来行われていた、余った木片などを現場で焼却処分することは現在は違反行為となっています。
 そこで、この増殖池にならい、通常、廃棄物として処理しなければならないような資材を、生物の生息環境の創出材料として初めから設計書の中できちんと明記し、現場内で処理することが、非常に有効な手段になるのではないでしょうか。

 この増殖池での例のように、板を水中に設置することも良いですし、単に陸地に山積みにするだけでもOKです。石や木材などを山積みにして作り出す生息環境は「エコスタック」と呼ばれ、昆虫やトカゲなどの小さな生き物にとって快適な棲みかとなるのです。

 廃棄物の処理には多額の経費がかかります。しかし、設計書の中で明示することで、現場内に放置する廃材が、生物の生息空間として位置づけられ、処理経費の削減と資源の有効利用につながるのです。設計者の皆さん、ぜひ検討してみてください。
 誤解を招かぬよう、説明看板を1本立てておけばOKです(看板には間伐材を用いて、環境に配慮した事業であることをアピールしましょう)。

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