餌を食べさせるテクニック

 クロサンショウウオは、たまに拒食を起こします。そんな場合の対処方法について紹介します。
 ちなみに、我が家では約3ヶ月の拒食という不名誉な記録が2回あります(いずれも無事回復しています)。

拒食の原因

 なぜ拒食するのか、はじめにその原因を考えて対処することが大切です。

変態直後

 変態して上陸後しばらくは餌を食べなくなりますが、これは普通なので心配はいりません。変態後は、餌を食べるよりも早く安全な場所に移動する必要があるため、食欲がないのだそうです。無理に食べさせようとしないでください。

飼育環境の不備

 複数飼育している場合、その日に限って1匹だけが餌を食べてくれない、ということがあります。この場合は、その日の調子もあるのだろうと考えあまり心配しません。下で紹介している餌を食べさせるテクニックを参考に給餌してみてください。

 問題は、ほとんどの個体が同時期に食欲をなくしたとき。
 温度は大丈夫か。水質は大丈夫か。空気がよどんでいないか。飼育環境をくまなくチェックして、問題が見つかったらまずはそれを改善します。
 意外に多いのが冬場におけるミスで、自分が寒いばかりにストーブで部屋の温度を上げすぎて、サンショウウオが調子を崩してしまうことがあります。

環境の変化

 飼いはじめて日が浅いうちは個体も新しい環境に馴れておらず、餌を食べないことがあります。飼育環境に不備がないか再点検したうえで、あまりあせらずに食べてくれるのを待ちましょう。
 長年飼育してきた個体でも、水槽を新しいものに替えたりシェルターの流木を替えたりといった環境の変化が原因で、(飼育環境は適切であるにもかかわらず)拒食を起こすことがあります。このような場合は、次に紹介する方法で食欲を回復できる場合があります。

餌を食べさせるテクニック

 餌を食べないときの対処方法について、以下に思いつくままに列記します。拒食とまではいかずとも、ちょっとすねて餌を食べないときにも効果的です。

餌の種類を変えてみる

 サンショウウオには、幼いころの食餌経験がその後の餌の好みを方向付ける傾向があるといわれています。たとえば、初めに細長い餌(ミミズやミールワームなど)を与えられた場合は、その後も細長い餌に餌付きやすくなります。
 そこで、初めて給餌に成功したときの餌を与えてみると、うまくいく可能性が高くなります。

 やわらかいものやジューシーなものがより食べさせやすいので、そういった餌に変えてみるのも手です。

なるべく小さい餌を使う

 大きい餌を使うと、その迫力に怖気づいて食欲をなくすことがあります。例えば冷凍アカムシなどを使う際は、ほんの数匹だけ摘んで与えるようにしてみます。

眼前の底床を突付く

 サンショウウオの眼前2cm程度離れた底床を、ピンセットなどでちょいちょい突付くと、食欲が増加します(底床が動くと、そこに獲物がいると錯覚するみたい)。
 一旦そうなると、後は通常どおりの給餌方法で面白いように食べてくれます(興奮度が高まっている)。

内臓の匂いで食欲を誘う

 残酷な方法ですが、活餌をピンセットの先やハサミなどで傷つけて、内臓を少しはみ出させ、それをサンショウウオの口元に押し付けてあげます。どうもサンショウウオは皮膚でも味を感じているふしがあり、これは非常に効果的です。また、自然下では、サンショウウオは獲物を視覚と匂いで判別しているそうです。
 このような残酷な処置を施してサンショウウオに食べさせる。人には見せたくない場面です。しかし、生き物を飼うという事はこういう一面もあります。

角度に気をつける

 ピンセットで給餌をする際は、クロサンショウウオが餌を食べやすい角度というものがあります。右図のように、水平からやや上向きに餌を持って、なるべく低い位置からサンショウウオの口元に差し出してみてください。
 餌を横向きに差し出して”横咥え”させるのも、食べさせやすい方法のひとつです。(ただし、固めの餌だとうまく飲み込めない。)

ピンセットを変えてみる

 使用しているピンセットに嫌悪感、恐怖感を覚えているのかもしれません。給餌道具を替えてみることも試してみてください。例えば、細い針金の先に餌を刺して与えてみたりします。

くわえた餌をひっぱる

 せっかく餌に食いついてもすぐに吐き出してしまう、という場合、餌を無理に押し込もうとしてもダメ。押してダメなら引いてみろといいますが、食いついた餌をピンセットで軽く引っ張ってあげると、「逃すものか!」とばかりに積極的に飲み込んでいきます。

頭のぶれを止めてあげる

 サンショウウオが餌を食べるときは、通常、頭の位置をあまり動かさずに、カエルのように舌だけを伸ばして獲物を口に運びます(右図)。


図1 正常な場合

 ところが、食欲がありすぎるような時、興奮しすぎて動作に勢いがつき、頭の位置が上下にぶれてしまうことがあります(右図)。これでは、餌に食いつくことはできません。
 この失敗を何度も繰り返すと、やがて、いじけて食欲をなくします。


図2 興奮しすぎ

 そこで、上手に食いつかせるために、指をつっかえ棒にして頭の位置を固定してあげることが有効です(右図)。

方法

  1. 図3のように、頭の数ミリ上空に指を添えて待ち構える。

  2. 餌をピンセットで差し出す。

  3. 食いつく勢いで頭が持ち上がるが、こつん!と指先に当たってストップ。

  4. 無事、餌に食いつくことができる。


図3 指でストップさせる

シェルターをどかさないで給餌する

 前のページで、給餌の際はシェルターをどかしても問題ない旨書きましたが、拒食の原因が精神的なストレスの場合は極力刺激を避けたいので、シェルターをどかさないで給餌します。シェルター下の個体の位置を横から覗いて確認し、そこめがけてピンセットで餌を差し込みます。これは待ち伏せ方の捕食者本来の捕食方法に近い状態になるためか、けっこう有効です。

別の個体の捕食シーンを見せる

 複数で飼っていないと行えない方法ですが、別の個体の捕食シーンをみせることで食欲をあおることができます。というのも、特に原因もなく餌を食べないときは、どうも餌を餌として認識できていないふしがみうけられます。別の個体が食べるのをみてはじめて餌だったのか!と気がつき、目の色を変えてピンセットの動きに反応しはじめることがよくあります。

ばら撒き給餌

 しばらくピンセットでの給餌をやめて、活餌(幼齢のコオロギやワラジムシなど)をばら撒いて給餌してみます。夜中のうちに食べてくれるかもしれません。ただ、目の前で食べてくれないことには、飼い主の不安は解消できないのが難点です。

水中給餌

 水槽内に水場を設けて、水中にいるクロサンショウウオに給餌する方法です。クロサンショウウオは、なぜか水中では貪欲さが増すのです。なぜなんだ!?

しばらく給餌を控える

 しつこく食べさせようとするのは逆効果で、さらにガンコな拒食に陥る場合があります。1ヶ月程度食べなくても餓死の心配はあまりいらないので、あせらないことです。

なるべく自然を再現する

 森林から落ち葉などをよく含んだ土壌を持ち帰り、小鉢に入れて水槽内に置いてあげるか、その土壌を敷き詰めた水槽で飼ってみます。このような土壌中には、サンショウウオの好物がたくさん棲んでいます。

強制給餌

 ミンチした餌を強制的に胃袋へ入れてやる方法です。非常に大きなストレスを与えてしまう方法なので、悪くすれば”とどめ”をさすことになる可能性も・・・。喉元を胸側へ押し下げるようにして口を開けさせるか、テレフォンカードなどで上手にこじ開け、スポイトや注射器状の器具を差込んでペースト状の餌を注入します。

どうしても食べない

 採取した個体なら、手遅れになる前に採取場所へ逃がします。購入した個体の場合は、飼育のベテランやプロショップに一時預かってもらうか、腹を決めて強制給餌に踏み切ります。

←戻る

トップページ > サンショウウオの飼育 > 餌の与え方 > 餌を食べさせるテクニック

サンショウウオ URL : http://xto.be/ ご質問等ありましたら掲示板にお願いします。
※完全リンクフリーです。ご自由にどうぞ。