餌の与え方

 餌について、はじめにこのページで全般的な与え方について説明し、次のページで具体的な餌の種類を紹介します。

与え方

給餌頻度

  • 幼体は、毎日か1日おきくらい

  • 成体は、2〜3日おきくらい

 上を目安に、気が向いたときに与えます。
 代謝が低い生物なので、1回の給餌量を増やせばもう少し間隔を空けても(例えば1週間おきでも)餓死の心配はいりませんが、給餌の際に得られる情報(餌食いの良さ、反応速度など)は個体の健康状態を知る上で重要なので、あまり空けすぎるべきではありません。

 なぜ、幼体には頻繁に、成体には間隔を空けて給餌するのか? ⇒ 「給餌頻度の考え方

給餌量

  • 餌への反応が鈍る程度与える

 給餌間隔によって食欲にかなりの差がありますが、クロサンショウウオは量に満足するとそれ以上餌を与えても興味を示さなくなります。そうなったら給餌終了。クロサンショウウオは元来食欲旺盛で、空腹時は勢いにまかせて食べ過ぎてしまう個体もあるので、他の個体の食欲を合わせみて適当なところで切り上げることも必要です。

 より的確な給餌量の目安を知る方法についてはこちら。 ⇒ 「給餌量の目安について

 経験上、頭胴長と同程度の長さのミミズなら問題なく飲み込みますが、あまり大きすぎる餌を与えると途中で吐き出してしまったり、悪いときは以下のような突然死の報告もあるので、少なめに与えるよう心がけます

  • 胃袋に餌が入りすぎて肺や重要な血管を圧迫し、酸欠死に至る。
  • 口腔内に餌が入りすぎ、呼吸ができなくなって窒息死に至る。
  • 餌の消化がうまく行かず、体の中で腐敗して中毒死に至る。

基本的な与え方

 ピンセットを用い、以下の手順で与えます。

  1. ピンセットで餌を摘む。

  2. サンショウウオの目の前に差し出す。

  3. 餌を小刻みにゆらす。(生きて動いているようにみせる)

  4. 10秒程度ゆらし続けてもサンショウウオが食いつかなかったら、一旦ピンセットを遠ざけ、再び2からやり直す。

 馴れた個体は、目の前に餌を差し出した瞬間、猛烈な勢いで食いついてきます。



 クロサンショウウオは「待ち伏せ型」の捕食者です。ひたすら獲物が通りかかるのを待ち、目の前にきた瞬間に舌を伸ばして獲物を捕らえます。視界に入った獲物を追いかけて食べようとすることはありますが、”獲物を探し回ってうろつく”ことはしません。
 動くものに対する視力は意外に良く、1m程度離れていても「む、獲物か!?」とばかりに顔を向けて注目することがあります。ただ、それが何であるかの判断は出来ないようで、水槽を覗き込む私の動きにも同じように反応してしまいます。

 なお、シェルターの流木等が邪魔になる(下に隠れている個体に給餌できない)場合は、シェルターを取り出してから給餌します。多少余計なストレスを与えてしまいますが、馴れると、これが給餌の合図になり食欲を刺激することすらあります。給餌後に元に戻しますが、毎回、流木の位置が変わってしまっても問題ありません。

 どうしても餌を食べてくれない。どうしたらよい? ⇒ 「餌を食べさせるテクニック

栄養改善

 自然下のクロサンショウウオは様々な餌を食べ、トータル的に栄養バランスのとれた食生活を送っています。しかし、飼育下では餌の種類も限られ、また、飼育環境という不自然な環境下では、特定の栄養素の要求量増大もありえます。

 そこで、不足しがちな栄養素をあらかじめ餌(昆虫などの生きた餌)に添加して、栄養改善したうえでサンショウウオに与えることが推奨されています。手に入りやすい活餌のほとんどはカルシウム不足が問題視されているので、これを改善することが一番の視点です(餌として理想的なカルシウム量は総給餌量のうち0.5%〜2%(乾燥重量)で、かつ、カルシウム対リンの比率が1.5:1)。

 参考まで。 ⇒ 「活餌の栄養価

 栄養改善には、次のガットローディング(ローディング)ダスティング(ダスト)という2つの方法があります。

ガットローディング gut-loading

 「栄養失調の虫を食べていれば、栄養失調のサンショウウオになる。」と言います。

 ガットローディングは、餌となる虫に直接ビタミンやミネラルを食べさせて、あらかじめ体内に栄養を蓄積させた上でサンショウウオに与えるという方法です。
 日ごろから栄養豊かな餌を与えて活餌をストックしておけばよいのですが、給餌の前の晩からガットローディングを開始しても充分に効果があります。例えば、ミールワームをカルシウム11.7%、リン0.55%を含むサプリメント剤の中に24時間入れておいたところ、体内のカルシウム量が0.84%にアップし(通常は0.1%にも満たない)、カルシウム:リンの比率が1:3.7 → 1.38:1に改善されたという報告があります。

 用いるビタミン・ミネラル剤は爬虫両生類専用のものでなく、人間用に売られているサプリメントでOK(そのほうが安価で高品質)。

ダスティング dusting

 食べさせる直前にパウダー状のサプリメントを餌にまぶし、体表に付着させることをダスティング(略してダスト)といいます。例えるなら、自然下のサンショウウオが土のついたムシを食べて、土に含まれるミネラル等を摂取する場面に相当します。
 特に、ガットローディングの効果が見込めない老齢の活餌(老齢はあまり餌を食べない)の栄養改善は、このダストに頼ることになります。

 ダストに用いるサプリメント剤は、人間用ではなく専用品のほうが便利です(人間用は錠剤が多いので、それをパウダー状に加工する手間が必要になるため。また、リンの過剰を招く恐れがあるので、リン酸カルシウムなどリンを含む製品は避けるべき)。


定番の総合サプリメント
「ミネラオール」
(ビタミンDの入った屋内飼育用)

カルシウム剤

カルシウム剤

 ダストの方法は次のとおり。

  1. プラスチックのコップ等に餌を入れる。

  2. そこにサプリメント粉末をひとふり入れる。

  3. コップをよく振り、粉末をまんべんなく付着させる。

 餌の表面がぬれていないとうまく付着しないような気がしますが、案外大丈夫です(ベビーパウダーのような感じ)。
 ただし、パウダーそのものが湿気ていると付着率が格段に落ちるので、成分の酸化を防ぐ意味でも開封後は密閉性の高い容器に移し変えて保管したほうがよいです。


コップに入れてシェイク!

 あまりたくさんのパウダーをつけると、慣れていない個体は、その「粉っぽさ」に異物感を感じて吐き出してしまいます。一回の量は控えめに。


液状のビタミン剤

 液体状のビタミン剤もあります。左写真の「レプチゾル」は、飲み水に混ぜて与えるサプリメントです。サンショウウオは口で水を飲まないので、エサに直接付けて与えます。飼育水に溶かして、皮膚から吸収させる方法もあります(どれほど吸収できるかは分からない)。

 てんぷらに衣を付ける要領で、レプチゾルでエサをベトベトに濡らしてからパウダー状のサプリメントを振りかけると、容易に付着させることができます(面白がって、つい、付けすぎてしまいがちになるので要注意)。


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