サンショウウオを餌にする!?

 ぶっそうなタイトルですが、このページは”共食い”をテーマに書きたいと思います。

 春先、狭い水場でおびただしい数のクロサンショウウオの卵のうを見ることがあります。ひとつの卵のうに普通30〜40の卵が入っていることからすると、生まれるのは相当な数。弱い生物ほど、たくさんの子供を産むといいますが、どうもこれには隠された意味があるように思うのです。それは、「弱い生物がたくさんの子供を産むのは、それ自体を餌とするため」ではないか、すなわち、共食いを初めから想定しているのでは?ということです。

生き残り戦略としての共食い

 多数のサンショウウオの幼生を一緒に飼ったことのある人はご存知のとおり、幼生時代、共食いは頻繁に発生します。自然界でも、特にサンショウウオ孵化直後の春先は餌となる水棲昆虫等がまだ十分に増えていないため、食糧不足が起こりえます(越冬した水棲生物は比較的たくさんいるが、サイズ的に大きすぎるものが多い)。

 なぜ、そんな時期に孵化するのか。
 思うにサンショウウオは、自分たちを捕食するような生物がまだ大きくならないうちに、それに抗えるまでの大きさに成長したかった。つまり、より条件の悪い早い時期に孵化し、そういう時期だからこそ起こりうる食糧不足解決の手段として”共食い”を選んだ種類だけが、自然淘汰を勝ち抜き生き残ってきたのではないでしょうか。弱い個体を餌にすることで、強い個体だけが生き残るという、すさまじい種の存続への執着です。まあ、これは私の想像にすぎないので、本当の所はわかりませんが・・・。

追記1

 幼生を”餌として”たくさん生むという話、なんと実際にそういうことがあるそうです。scale006号でこんな記事を見つけました。バジェットガエルは、食料の少ない水たまりの中でおたまじゃくしが成長できるように余分な数の卵を生み、やはり強いものが弱いものを食べて生き残るのだそうです。

 乾燥帯に棲むある種のカエルは雨季にできたばかりの水たまりに卵を生むそうです。生まれたオタマジャクシは何を食べて大きくなるの!?なんと、雨季が来る前に死んだ生物の死体や枯草など。そして、もしこのとき運悪く水たまりが干上がってしまい、オタマジャクシが全滅しても、その亡骸が次回生まれてくる弟・妹たちの餌になるというわけです。
 大自然のシステムは本当にすごいです。

追記2 幼生の共食い

 上で、「幼生は共食いを初めから想定しているのでは?」という想像を書きましたが、サンショウウオについて調べているうちに、このことは専門家の間では常識だということがわかってきました(恥かしっ!)。

 基本的には孵化の時期の早いものが、遅く孵化した幼生を食べます。そして、なんと!遅く孵化した幼生は成長が抑制されるそうです(”食べられやすい大きさ”でいるためです!)。
 そして次の幼生が孵化すると、それまで食べられる側だった幼生の成長が今度は促進され、食べる側にまわるというのです。う〜む、すごすぎる。

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