おしゃれに飼いたい!
水辺の風景は、どこか私達を引き付ける魅力にあふれています。流行のアクアテラリウムはそんな水辺を表現した水槽。大胆にレイアウトされた流木からは水滴がしたたり、木々の間をうっそうと埋めつくす鑑賞植物は、その可憐な花で春の訪れを告げる・・・あぁ・・・そして、繊細な水草の隙間から、ときおり顔をのぞかせる色とりどりの熱帯魚たち。あたかも、大自然の一部を切りとって水槽に入れてしまったような・・・なんて欲張りなボク。
・・・こんな水槽なら奥様にも受けがよく、お客さんが来たときでも自慢して見せることが出来るでしょう。
ところが、サンショウウオ水槽となると話は別。まず条件反射的に敬遠されます(涙)。
飼育の機能性を追求すれば、さらに鑑賞面はおろそかに。そういった純粋に飼育を楽しむ飼い方も楽しいものですが、私としては、おしゃれに飼育を楽しみたかったのです。
そこで、発泡スチロールを用いたバックスクリーンと土留めを作成してみました。
素材の検討
発泡スチロールの利点
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カッター等で簡単に切れる。場合によっては手でもぎ取る・爪でぼりぼり削ることもできる(素手でやるとけっこういい味が出たりします)。
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半田ごてでいろいろなディテールが入れられる。
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思いどおりの形にならなくても、それなりに見れるものが作れる(自分でも「おっ」と思うような作品がいつのまにかできることがある)。
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軽いので、水槽の重さが心配なときでも安心して使える。
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生体に害がない。
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大きめのホームセンターで厚みのあるもの(10cmくらい)が簡単に手に入る。
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塗装したあとのアク抜きがすぐにできるので、作ったその日のうちに水槽内に使える。せっかちな人(=私)にはうれしい!
欠点
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もろいので、水槽をいじっているときにちょっと何かでひっかけると、その部分がポロっと削れてしまう。こうしてひっかいてしまった部分は、周りの塗装面と違って真っ白なのでかなり目立つ。
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すごく軽いので、水槽より大きめに切り出し、むりやりはめ込むか、つっかえ棒をしたりシリコンで接着しないと、簡単に浮いてしまう。
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削り出しや半田ごてでの加工は、(粘土などを加工するのと違って)取り返しがつかない。ま、接着しなおしたりすれば別ですが、この手のミスをすると、急速にやる気をなくしてしまうことが多いです。ディテールを掘り出しているときのミスは、こういった部分が思いがけず良い雰囲気になることも多いのですが。私が始めて作ったときは、水槽の横幅よりも数ミリ小さく切ってしまって、水槽に収めると脇がスカスカになってしまいました。残念ながらゴミ箱行き(;;)。
よし!バックスクリーンをつくろう
私がこう決意したのは、じつはポリプテルスのための90cm水槽を購入してからでした。せっかくだから何かかっこいいレイアウトをしたいと思いましたが、重さが心配だったため発泡スチロールを使うことに。ホームセンタームサシで1m四方、厚さ10cmのものを(1800円くらいだったか?)購入してきました。何しろバックスクリーンを作るのは初めてだったので、なかなか作業が進みません。
大まかなデザインを描く
この工程に、一番時間がかかりました。
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枠線をポスカで書きます。完成したら無理やりはめ込んで固定するため、水槽よりも横幅を1cmほど大きめにします。
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水位線を書きます。私は水槽の半分より少し上くらいの水位にする予定でした。
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デザインを考えて、大まかに描きます。削り出せばどうせ見えなくなるので、テキトーに、ただの目安程度に考えて描く。
私は、右側に流木の根元を再現し、バックは自然な感じで水が滴るように、大胆な凹凸を付けることにしました。流木の根元は立体的にデザインしてあり、その裏側に入ったりできます。

これが完成したバックスクリーン
削りだす
描いたラインに沿って削りだします。カッターでざくっと切って、手でボコボコと削って行きます。
この時、側にゴミ袋と掃除機を置いておくと、削り粉を随時掃除できて便利です。削り粉は静電気でしつこく体にまとわりつくので、スカートなどにかける静電気防止用のスプレーがあると良いです。
カッターは幅1cmほどの細いほうのスタンダードタイプを使うと、ある程度湾曲するので使いやすいと思います。替え刃は必需品。私は3回ほど折りました。
ディテールを施す
削り出しが終わったら、次は半田ごてでディテールを付けます。
コツは全面に同じようなディテールを付けるのではなく、ある程度のまとまりを考えること。半田ごてを使わなくても、削り出しのときに自然にできた凸凹は、結構良い雰囲気になっていると思います。私の場合は、流木のみに細かいディテールを付けることにしました。
注意点
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発泡スチロールを溶かすときに出る煙は体に悪いので、十分換気を行う。
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あまりこだわっても思いどおりには行かないと思うので、テキトーにやってしまう。
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半田ごての先は細い爪楊枝状のものより、太い銅製で先端が尖らせてあるもののほうが、大胆な溶かし方も、繊細な溶かし方も両方できて使いやすい。
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濡れタオルを用意して、半田ごての先端にくっついてしまった発泡スチロールをふき取りながら作業をすると、いつまでも先からいやな煙が立ち昇っているようなことがなくなり、良いです。
私はここまでに1週間もかかりました。作業を始めればどうってこともないのですが、時間を見つけながらこつこつとやっていたら、そうなりました。テキパキと作業すれば1時間で出来るでしょう。
さて、ここまできたら、塗装の前に一度水槽にセットしてみましょう。
90cm水槽は真ん中にも枠が渡してあるので、そのままの大きさでは入れることができません。目立たない所で分割する必要があります。
ここでは流木の左端のラインに沿って分割しました。あとは、ぎゅっと押し込んで固定します。
「・・・むむ、きつくて入らない。少しカットするか。」
ザクザク・・・。
「・・・まだ足りないな。」
ザクザク・・・。
「さて今度はどうだろう・・・。」
「うそ・・・あぁぁ!!!・・・切りすぎてしまったー!うぁぁ・・・ふぅぅぅ・・・・」(;;)
ということで、私は切りすぎてしまったためにスカスカになってしまいました。一週間の苦労が水の泡になった瞬間でした。
シリコンで接着すれば固定できますが、両わきの隙間は空いてしまうし(そこにゴミが溜まりそうだ)、隙間をまた発泡スチロールでふさいだとしても、不自然な継ぎ目が分かってしまって気に入りません。
こうして、私の第1回目のチャレンジは、ゴール間近の大失敗で幕を閉じました(爆)。
その後、このとき作ったバックスクリーンは未練と共に玄関の隅に保管されていましたが、数日後ストレス発散とばかりにバキバキにくだいてゴミ箱行きとなりました。
再チャレンジ
結局90cm水槽は紆余曲折を経て、たいしたレイアウトもない水槽として使用されています。
しかし、かっこいいバックスクリーンへの野望は捨てきれません。そうです、サンショウウオ水槽です。60cm水槽の再々レイアウトのために40cm水槽に避難していたサンショウウオに、はやく新居を作ってあげなければなりません。
デザイン方針は、ごつごつした岩肌にコケが活着し、ぽたぽたと水滴が落ちるような感じ。バックと土留めを発泡スチロールで作成します(右図参照)。
さっそく、ざっとポスカで絵を書いて、今度は慎重に寸法を書きこみ、なれた手つきで削り出し&ディテール付けです。ここまで、驚くほど手際よく作業が進みました。
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そして、いよいよ水槽にはめてみます。・・・またも、ちょっときつすぎで入りませんでした。しかし今回は切り過ぎないように慎重に大きさをあわせ、みごとうまくはまったのでした。水槽をぬらすとすべりが良くなってはめ込みやすいですよ。
塗装
水槽に入ることが確認できたので、いよいよ塗装です。
塗装に用いたのはホームセンターで購入した水性スプレーです。水性といっても乾けば水には溶けません。注意するのは、発泡スチロールに塗れると明記されているものを選ぶこと。
近くの公園に行き、持っていた新聞紙をひろげて塗装作業開始!
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「ブラック」を全体に吹く。ざっと乾くまで10分ほど待つ。塗り重ねの度にアク抜きが必要らしいが、厚塗りするつもりがなかったので、このまま次の色塗りにとりかかる。
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「チョコレート」をかるく吹く。すぐ乾く。
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「ブラウン」をほんのすこし吹く。すぐ乾く。
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「つや消しフラット」を全体に吹く。
最後のつや消しフラットは、つやがあるとカッコ悪いので使いましたが、初めからたいしてつやが出ていなかったので、吹く必要はなかったかも。この日は天気が良かったので、塗料は見る見る乾きました。
で、家に帰って、アク抜きです。アク抜きはシャワーで60度のお湯(ここまでしか出なかった)を5分くらいかけ続け、念のため、お湯を張ったお風呂に10分程浸けることで完了としました。完全ににおいは抜けませんでしたが、専門誌によるとこのくらいやれば十分だそうです。
お風呂に浸けたときに気がついたのは、その浮力の強さです。
60cm×15cm×3cm程度の発泡スチロールであっても、大の大人の力でえいっとやらなければ、完全に水中に沈めることは出来ません。
このぶんでは、水中部分に設置する土留めは、よほどしっかりはめないと浮いてしまうかもしれません。
しかし、そのためにも、上図で示してあるとおりL字型の”控え”を作っています。この控えの部分に床材がのるわけなので大丈夫なはず、浮きません。(浮かないでくれ!)
水槽にセットする
いよいよ実際のセッティングです。図のとおりに底面濾過をセットし、出来あがったばかりのバックスクリーンと土留めをぎゅっと押し込んでセットしました。
続いてセラミックボールを避難用40cm水槽から移し(サンショウウオはさらに別の容器に避難)、いよいよ給水です。
恐る恐る、予定の水深まで水をいれます。
「よし、大丈夫だ」さっそく、サンショウウオたちを新しい水槽に移し、濾過器の電源も忘れずに入れ、ビールを片手に満足してながめます。濾過器を通った水はバックの最上部にセットしたシャワーパイプから、バックの凸凹をつたわりながら流れています。めちゃかっこいいです。
あとは、ここに植物を植えてうまく繁茂すれば完成です。
その日は満足して眠りについたのでした。
・・・あまかった
数日間は平和に過ぎました。いえ、そう思いこもうとしていました。毎日すこしず〜つ浮き上がってくる土留めを、見て見ない振りしていたのです。
・・・失敗の原因はL字型の控えを設けたことでした。この部分が押さえになるどころか、かえって浮き輪のような役目を果たしたようでした。
「いったいどうすれば・・・」せっかく作った土留め、無駄にはしたくありません。
結果的に、このL字部分が、思いがけず役に立つことに。私はあわてずさわがず、ここにつっかえ棒をかませ、みごと浮き上がらないようにしたのでした。
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さらに、このつっかえ棒は園芸用のヘゴ材を使って作ったので、あとでポトス等の園芸植物を活着させれば、すごくかっこよくなるはず。大成功です。
それにしても、浮き上がった土留めの下に砂が入ってしまったため、一度入れた砂と水をすべて出して、セットしなおすのは大変でした・・・。
とりあえず完成!

なかなかいい感じに仕上がった
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その後、ポリプテルス水槽で増えまくっていたミクロソリウムと、ショップで買い足したウィローモスをぺたぺたとバックに張りつけ、とりあえずの完成としました。あとはつっかえ棒になにか植物を活着させ、水中部分にも何か植えたいです。
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半田ごてがあれば、このくらいのディテールは簡単に入れられますよ。私はこのためだけに半田ごてを買いました。2000円くらいだったと思います。
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岩肌をイメージ
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今後の緑の繁茂が楽しみ
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葉っぱから滴り落ちる水滴。いいですね。そのうち、ウィローモスがびっしりと繁茂し、味わい深い風景になるハズ。水質向上にも有効ですし、きっとサンショウウオたちも喜んでいることでしょう。
塗料の影響が心配なので、念のため、しばらくはこまめな水換えをした方がいいかもしれません。今の所は、サンショウウオに悪い影響はないようですし、専門誌によると、こういった塗料で悪影響が出た例は今までないそうです。
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