成体の飼育設備その1(水槽設備)

 いよいよ、変態して陸上生活に移ってからの飼育設備について説明します。これから先の一生を、この設備で飼育することになるので、初めからシッカリとしたものを用意すれば後で困りません。

 始めにこのページで、水槽そのものや内部レイアウトなど、基本的な「水槽設備」について紹介し、次のページにおいて、水質維持など、管理上重要な「維持管理設備」について説明します。

水槽設備

水槽の構成

 成体を飼育するための水槽の構成は、下図のとおりです。

水槽サイズの選び方

 クロサンショウウオは狭い隙間に隠れることを好むため、水槽内にシェルター(隠れ家)を設置する必要があります。そこで、「複数のシェルターを置くことができ、各個体が気に入った場所を選ぶことができるくらいの広さ」がサイズ選択の目安になります。
 下表のメリット・デメリットも参考にしてください。

区分 ○ メリット × デメリット
大きな水槽
  • 衛生環境の悪化が緩やか。
  • たくさんのシェルターを設置できる。
  • 多様な環境を用意でき、サンショウウオ自身が好適環境を選ぶことが出来る。
  • 水槽そのものの値段が高い
  • 置き場所に悩む。
  • 掃除がたいへん。
  • 活餌を水槽内に放して給餌する場合、運の悪い個体は餌にありつけない。
  • 引越しのとき、すんごい苦労する。
小さな水槽
(タッパーなど)
  • 掃除が楽。
  • 冷蔵庫に入れて飼育でき、温度管理が楽。
  • 知り合いが遊びに来たとき隠せる。
  • こまめな掃除が必要。
  • 見た目に窮屈で飼育者の精神衛生上よくない。
  • 観賞に不向き。

 経験上、10匹程度の飼育なら60cm標準水槽で当分の間問題なく飼育できます(以下の記事では、60cm標準水槽を用いると想定して説明します)。しかし、成長して体が大きくなってくると、60cm水槽では窮屈になってきます(出会い頭の共食い事故が生じるようになる)。60cm水槽で3〜5匹程度の飼育が無難かも。

 なお、水槽の側面、背面、底面には、保温(保冷)のため、発泡スチロール板などの断熱材を貼ります。

床材

  • ハイドロカルチャー用セラミックボール(ハイドロボール)


軽くて保水性がよい

 以下のように、クロサンショウウオの床材として適しています。

  1. 保水性がよく、つぶも大きいので誤食の心配が少ない。

  2. 多孔質で濾過バクテリアの繁殖場所として期待できる。

  3. 見た目も悪くない。

 最近ではショップや雑誌の紹介でも、このハイドロボールが使われている場面を見ることが増えてきました。ハイドロボールの詳しい話題についてはこちらをご覧ください。 ⇒ 「ハイドロカルチャー用セラミックボール

 敷き厚は、思い切って厚く敷き(少なくとも10cm程度以上)、表面に水溜りができない程度まで水で満たしてください(右図参照)。

 ”厚底”にすることは、以下の理由によります。

  • 敷き厚を大きくとることで、水量が確保でき、衛生環境の悪化(水質の悪化)スピード・水温の急変を和らげることができる。セラミックボールは比重が軽く、ボール間相互の空隙が大きくて目詰まりしにくいため、厚く敷いても汚れが蓄積しにくく、掃除も簡単。

  • 蒸発により水位が低下しても、表面の乾燥化を防ぐことができる。(ハイドロボールは保水性が高く、よく水を吸い上げる。)

  • 大量のハイドロボールが濾材(濾過バクテリアの棲みか)として機能し、濾過能力アップ。

 ハイドロボール以外の床材を選ぶ場合は、こちらに留意してください。 ⇒ 「床材選びあれこれ

フタ 【超重要】

 クロサンショウウオは脱走の名人で、信じられないほど小さな隙間から逃げ出してしまいます。

  • 厳重の上に厳重を重ねたフタをしてください

 クロサンショウウオは湿った環境でなければ生きていけないため、脱走を許すと、たいていは最悪の結果につながります。私の飼育経験の中でもっとも大きな失敗が、しっかりしたフタをしなかったことでした。 ⇒ 「なぞの失踪事件

送風ファン

 サンショウウオに乾燥は禁物ですが、逆に、蒸れも良くないといわれています。そこで、フタにはメッシュを設けて通気性を確保しますが、併せて、送風ファンを設置するとベターです。
 ファンは、水槽内から水槽外の方向に風を送る向きで設置してください。(直接サンショウウオに風を当てると急激な乾燥を招き、よくない。)


送風ファン

水温計

  • 見やすいところに付けて、頻繁にチェック!

 クロサンショウウオは暑さが大の苦手なので、水槽内の温度が上がった場合は早急に対策を講じなければなりません。したがって、できるだけ見やすい位置に設置し、頻繁に確認する必要があります。ガラス面スレスレに、底床に埋める形で設置すればOKです。
 水温の管理方法については、後のほうで説明します。

シェルター

 クロサンショウウオは自然下では倒木の下や地中などに生息しており、飼育下でも狭い物陰を好みます。 上でも書きましたが、シェルター(隠れ家)を必ず用意してください。
 シェルターとしては、次のようなものが使えます。

  • 流木

  • 割った植木鉢

  • 植木鉢の受け皿を逆さにしたもの

  • コルクバーク

 素材はプラスチックなどでも良いですが、木や素焼きのほうがベター。木や素焼きは、湿らせると比較的長時間に渡り気化熱を放出して冷えるので、サンショウウオにとって快適な環境作りに一役買ってくれます。
 シェルターの設置数は、サンショウウオ自らが自分に適したものを選べるよう、なるべく多めに用意することが重要です(体の成長に伴い一匹ごとの占有面積が増えていくことも忘れない)。底床の大部分を覆い尽くすくらい入れてOKです。

水場について

 産卵のため以外には、サンショウウオが泳げるような水場は一切必要ありません。クロサンショウウオの成体は、あくまでも陸地の生き物です。
 しかし、水場を設けることで、万が一乾燥化が進んだ際の逃げ場所になったり(渇水の防止)、水中で冬場の低温をやり過ごす(水中越冬様行動)などのメリットが考えられます。
 実際に水槽のほとんどを水場にして、石などで部分的に陸地を設けるだけで、良好に長期飼育し、繁殖までしている例もあります。

 飼育すること自体が自然状態とは異なるわけなので、無理に自然に近づけようとせず、より飼いやすい(非自然的な)方法で飼うというのは悪いこととは思いません。しかし、サンショウウオ飼育の経験をある程度積んで、自分なりの応用ができる段階になってからにしたほうがよいと思います。

冬眠設備について

 冬の間、クロサンショウウオを冬眠をさせたいという場合は、特別の設備を用意します。こちらを参照してください。 ⇒ 「冬眠のさせ方について


 水槽設備の説明は以上です。
 基本的には、シンプルな飼育設備がよいと考えますが、遊び心を発揮して水槽内をレイアウトすることもできます。参考まで。 ⇒ 「おしゃれに飼いたい!

 続いて、水槽環境を維持管理する設備について説明します。

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