嫌気性濾過経過レポート

2000. 6.25 観察開始
2000. 9. 4 すごい硫黄臭
2000.10.30 一時中断

2000. 6.25 観察開始

はじめに

 2000年5月15日に水草水槽に嫌気性濾過装置を設けました。嫌気性濾過は硝酸塩の還元濾過が目的ですが、失敗して水の腐敗をまねいてしまったケースも多く聞かれます。我が家の嫌気性濾過ははたして!?

 観察対象は、嫌気性濾過槽を通って水槽に戻る水の硝酸塩濃度溶存酸素濃度です。
 水槽中の水よりも硝酸塩濃度が低ければ、あるいは両方から硝酸塩が検出されなければ、嫌気性濾過成功!
 そして、成功するかしないかを左右する重要なポイントとなるのが、溶存酸素濃度です。

溶存酸素濃度について

 嫌気性濾過槽に入った水に溶け込んでいる酸素は、濾過槽の前半で微生物や好気性バクテリアにより消費されていきます。濾過槽の後半になると酸素が足りなくなって好気性バクテリアの増殖が抑えられ、逆に嫌気性バクテリアが大増殖。好気性バクテリアに押されて濾材の内部で細々と暮らしていくしかなかった嫌気性バクテリアが、我が物顔で濾材の全表面積を占領できる空間、それが嫌気濾過槽の後半部分なのです。

 そこで流量を絞って酸素の絶対量を減らし、速やかに嫌気的な状態に導こうとするわけですが、どこまで流量を絞ればよいかが課題です。絞りすぎると淀んで水が腐敗してしまうので、そうならない最適な流量を試行錯誤して決める必要があります。

初めての水質チェック

 嫌気性濾過槽の設置からおよそ40日。初めての水質チェックを行いました。
 これまでの間、4分の1程度の水換えを毎日行なってきました。現時点の嫌気性濾過槽への流量はエアホースからちょろちょろと出るくらいに調節してあり1分間に0.38リットルです。検査時(無論水換え前)の水温は27℃、ライトが点灯してから約4時間が経過しており、水草の裏側に光合成で発生した酸素の泡が付いていました。

溶存酸素をチェック

 まずは、気になる溶存酸素濃度。嫌気性濾過槽の中が、思惑通り嫌気的になっているのか?
 嫌気性濾過槽から出る水の溶存酸素濃度をTetraの溶存酸素試薬で調べてみました。また、比較のために、水道水と水槽内から直接採取した水についても同様に測定しました。
 注意したのは水の採取法です。水を揺らしてしまうと、空気中の酸素を取り込んだり、逃げたりする可能性があるので、危険物を扱うかのごとく丁寧に採取しました。

 結果はごらんのとおり。3種類の水とも最低値の2mg/l

 最低値とはいえ、嫌気性濾過槽から出てきた水も水槽内と同レベルの酸素を含んでいました。嫌気性濾過槽とはまったくの名ばかりです(;;)。流量が多すぎたのでしょうか。

 この時点で、かなりやる気をなくしました(^^;;。
 ・・・でも、まてよ!?もしや試薬自体が悪いのかも!?と、今度はシャワーを使って激しく水道水を取り、その水の酸素を測ってみました。
 すると・・・結果は5mg/l。確かに酸素濃度が高くなっている。試薬のせいではありません。

不思議

 不思議なのは、水草が酸素の泡を出しているほどの水槽なのに、どうしてこんなにも酸素濃度が低いのかということです。私は水草が酸素の泡を出すのは、水中の溶存酸素が飽和しているからだと理解していたのですが・・・。
 また、シャワーで激しく水を取っても、わずか5mg/lの酸素しか溶け込まないというのも疑問です。この結果には、どこか釈然としないものが・・・。

問題点

 ひとつの問題として、用いた試薬で測れる最低値が2mg/lだったことが挙げられます。
 水槽内が2mg/lだった以上、私が今後測りたいのは2mg/lに満たない数値ということになります。
 試薬の比色表で、右に行くほど(酸素濃度が高いほど)赤い色が濃くなっていることから、私は勝手に、0mg/lなら透明に近い色になると思い込んでいましたが、もしかすると0mg/lであっても、2mg/lの色と区別ができないくらいの色に染まる性質の試薬なのかもしれません。
 これは、後で製造元に問い合わせる必要があります。

後日、問い合わせたところ「1mg/lであれば、2mg/lの色と透明の中間色、0mg/lであれば、透明」という回答をもらいました。つまり、濃度が濃くなるにしたがって、色も比例的に濃くなると考えて良いようです。

硝酸塩をチェック

 さて気を取り直し、続いて硝酸塩濃度を計測してみました。
 水槽内から直接採取した水と、嫌気性濾過槽から出る水を比較しました。結果はどちらも10mg/l。理想的と言ってよい値です。
 これはきっと毎日の水換えのたまものでしょう。あるいは、嫌気性濾過槽内の濾材(シポラックス)の細かい空隙の内部が嫌気的になっており、還元濾過が行なわれているのかもしれませんが、たぶん違う気がします(すでに投げやり(^^;;;)。
 窒素濃度試薬というものが売っていれば、嫌気濾過後の水の窒素が多くなっている(還元濾過が行なわれている)か調べることができますが、そういう商品は聞いたことがありません。

 とりあえず、もう少し流量を絞りぎみにして様子を見たいと思います。読者の方から教えてもらった”流量を絞る器具”が見つからなかったので、ビニタイを巻きつけています。

2000. 9. 4 すごい硫黄臭

 今日、水草水槽の水換えをしていたときに、なんとなく水が臭いことに気が付きました。直感的に嫌気性濾過の排水口をつまんで匂いを嗅いでみたところ・・・。
 どわー!硫黄の匂いがする!!

大変なことが起こってる?

 現在、嫌気槽にまわす流量を1分あたり2ccと、ごくわずかに絞っていたのですが、そのせいか、なにやら大変なことになっているみたい。すぐに水質を調べてみましたが、アンモニア、亜硝酸、硝酸塩については検出されませんでした。pHは7.0で問題なし。う〜ん?
 しかし、あきらかに硫化物が発生してます。これって有害でしょ!?

 もしかすると匂いの嗅ぎ間違い(硫黄ではなく、メタンガス!?)かとも思い、今度はペットボトルに嫌気槽から出た水をたっぷりためて、鼻を近づけました。クンクン、あ、やっぱり硫黄の匂いだ・・・クンクン・・・うん、間違いない・・・クンクン・・・クンクン・・・気持ち悪くなってきた

 確かに硫黄の匂いです!温泉街に漂う硫黄臭なら風情もあろうものですが、ペットボトルの硫黄臭ときたら・・・。

酸素は確かに減っていた

 酸素が極端に少なくなりすぎると、ある種の嫌気性濾過細菌が幅を利かせ、こういった現象が起こることがあるそうですが、勉強不足でよく分かりません。嫌気槽からの水の酸素濃度を測定すると、確かに、かな〜り低くなっていました(2mg/l以下)。水換え直後でしたが、水槽内の水も測ってみたところ、その差はもう歴然。
 前回の水質測定では、酸素濃度に差が見られませんでしたが、流量を極端に絞ったことで、確実に嫌気槽を嫌気的に保つことができていました。
 しかし、ちょっと極端すぎたか!?

 何だかこのままではやばそうなので、とりあえず、水流を増やして嫌気槽から出てくる水をしばらく排水しました。その後、その流量のまま、また水槽にセットし直しておいたのですが、すぐにでも嫌気槽をやめた方が良かったでしょうか?ちょっとまずかったかも・・・。

2000.10.30 一時中断

 水量を絞ることを一時中断し、中のデニボールも撤去しました。しばらくはタダの好気的な濾過槽として活躍することになります。

とりあえずまとめ

 セット後の水質検査では確かに硝酸塩は検出できないほどでした。でも、これが嫌気性濾過のおかげかどうかは疑問。水換えも頻繁にしていたし・・・。
 硫黄臭については、流量を少し増やすことでなくすことができましたが、ちょっとした水あかのたまり具合でそのバランスがくずれたりして、良い状態を維持するのは大変でした。このような理由があり、このたび嫌気性濾過を止めることを決心に至りました。
 なお、硫化物は魚の呼吸に障害を与えるそうです(NHKの番組で言ってました)。幸い、我が家の魚たちは大丈夫でしたが・・・。

 アクアリウムの先人たちの中にも、デニボールに手を出したはいいが効果が良くわからなくて結局やめてしまったという方は多いと聞きます。私も同じ轍を踏んでしましました。
 少なくとも嫌気性濾過についての認識不足、勉強不足の中で、手を出したことは時期尚早だったと感じています。

デニボールのナゾ

 さて、そのデニボールですが、嫌気槽から取り出したところほとんど形が変わっていませんでした。半年も経っているのに、少しも溶けていないのですよ!
 デニボールを分解するバクテリアがうまく機能していなかったのでしょうか。う〜ん。やはりすべてのポイントは流量調節の妙にある気がする・・・。


新品のようだ!?

 というわけで、今回の実験は課題山積のまま一時中断ということになりました。とりあえずデニボールは大切に保存しておいて、今後またチャレンジしてみたいと思います。

(実は、このしばらく後、同じ装置で同じ様にデニボールを使って嫌気性濾過に再チャレンジしました。設置した水槽も同じ。その結果、足し水と極たまの水換えで1年以上維持し、現在も引き続き別の水槽でその濾過能力を発揮し続けています。水量を微調整できる器具をつけた他は、特に改良した点はなし。メンテナンスとして、時々チューブをしごいて水あかによる目詰まりを解消する程度です。成功させるコツについては、今のところ具体的な答えが見つかりません。)

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