嫌気性濾過槽の自作

 生物濾過では、汚れはタンパク質→アンモニア→亜硝酸→硝酸塩という流れで次第に毒性の低い物質に変わっていきます。そして最終的には硝酸塩が水槽の中にたまっていき、これを日々の水換えで排除する(薄める)、これが通常の濾過システムのサイクルです。

もう一歩先の濾過

 さらに一歩進んだ濾過方式に嫌気性濾過というものがあります。これは、今まで水換えで排除するしかなかった硝酸塩を「還元濾過」し、窒素として空気中に放出するというもので、ここでは活動に酸素を必要としない嫌気性バクテリア(還元脱窒菌)が活躍します。

 嫌気性バクテリアを効率よく繁殖させるために、

  1. 酸素濃度を低くするため、流速の遅い濾過槽を設ける(微生物に酸素を消費させて酸素濃度を下げる)

  2. 濾過槽は遮光する(光合成で酸素を出す緑藻類の繁殖を防ぐ)

  3. 特別な餌(炭素)が必要

などが挙げられます。
 これらのことを考慮して、嫌気性濾過槽を自作してみました。

仕組み

 既設の外部濾過器の排水側に分岐ユニットを付けて、わずかな流量を嫌気性濾過槽の方へ分岐させるというオーソドックスな手法をとりました。

バクテリアの餌

 濾過槽には、濾材とともに、嫌気性バクテリアの餌となるNewデニボール(還元バクテリアの増殖用炭素)を入れます。

60cm水槽でデニボール8個が必要。あくまでも餌なので、6ヶ月に一度半量を追加します。

 なお、注意書きとして「・・・設置は1週間毎に規定量を2〜3回に分けて分けて入れてください(厳守)」とあります。気をつけてください。私は全部入れた後でこの注意書きに気が付きました(;;)。まあ、あまり問題なかったようです。

 それでは、嫌気性濾過槽および分岐ユニットの製作方法を説明します。

濾過槽本体の作り方

 まずは材料ですが、主に塩ビ管を使います。塩ビ管のメリットは、比較的安価で手に入りやすいということと、好きなサイズを選べるということです。下の写真で左上から、

  1. 塩ビ管エンドキャップ(これが頂部になります)

  2. 塩ビ管内掃除用のフタ(これがになります)

  3. 塩ビ管つなぎ(フタと塩ビ管をつなぐための部品です)

  4. 塩ビ管(濾過槽本体です)

 塩ビ管の太さと長さは、中に入れたい濾材の量によりますが、今回は60cm水槽に使うとして径5cm、長さ55cmとしました。このサイズで、デニボール8個とシポラックス1リットルがぴったり収まります。

 給水、排水ホースにはエアチューブを使います。濾過槽とエアチューブをつなぐ部分には、市販のエアチューブ接続用のプラスチックのパイプを用います。

  1. 初めに、エンドキャップの頭に孔をあけ排水口にあたるプラスチックパイプを通し接着します。パイプの径、ぎりぎりの大きさで穴をあけるようにしてください。接着には塩ビ用の接着剤を使うとともに、それが乾燥後、シリコンで二重に固定します。
     この箇所はとくに接着面積が小さいので、十分に注意してガッチリと固定するようにしてください。

  2. 次に、各塩ビ部品を前出の図のとおりに組み合わせ、接着します。

  3. 続いて給水側のパイプを接続するための孔をあけますが、接着面積を増やすため、フタの雌側塩ビ管つなぎが重なって、厚くなっている部分にあけます。排水側と同様に、がっちり接着してください。

  4. これで濾過槽の完成です。

工夫点

 工夫したのは、フタを濾過槽の底部に設置した点です。
 デニボールの炭素成分を濾材に効率よく供給するうえから、右図のとおり濾材の手前側に入れることが効果的ですが、デニボールを半年に一度半量を追加する必要があることを考慮し、フタをデニボール側に付けました。もし、フタを上部に付けてしまうと、デニボールを追加するときに、一旦濾材を全部取り出すはめになります。

分岐ユニットの作り方

 分岐ユニットの役目は、嫌気性濾過槽へわずかな流量を流すことにあります。そこで、まずはエーハイムのパイプと一方向弁(エアーポンプのエアー量を調節する部品)を組み合わせてみました。

 写真のように作成し、実際にセットしてみたところ、非常にうまく流量が調節できました。ところが、やはりというか、水漏れ発生。

 一方向弁は、もともとエアー量を調節するための部品。コック部の気密性は低い。

 指先で触ってみて、少し湿っているなという程度の水漏れでしたが、家を留守にするときなどは不安。この案は失敗でした。

 しかたなく、ここにもプラスチックのパイプを使うことにしました。シリコンも使って厳重に固定。

 これで、分岐ユニットの完成です。

設置

 60cm水草水槽に設置。なるべく酸素が少ないよう排水側で分岐させました(ただし、正圧力のため水漏れの心配は増す)。

 また、流量の調節は当初の目論見だった一方向弁が使えなかったので、とりあえずエアチューブの途中を軽く縛って調節することにしました。

 さて、流量は非常に重要なポイントですが、どのくらいの流量が適しているのかはよくわかりません。とりあえずポタリ、ポタリと水滴が落ちる程度にしています。


赤丸の部分

うまく嫌気性濾過できますように・・・

 嫌気性濾過が働き始めると、3ヶ月に1回程度水換えをするだけで、硝酸塩を低濃度に抑えておけるといいます。しかし、なかなかうまくいかないことも多く、かえって水質を悪化させてしまうことも多々あるらしいのが嫌気性濾過の怖いところ。安全のため、設置後はこまめな水質チェックをしなければなりません。

 水換えの手間を省き、楽をするために設置したはずの嫌気性濾過槽が、一方で、こまめに水質検査をしたほうがいいなんて・・・面倒くさっ!

 設置後の状況について、こちらで報告しています。 ⇒ 「嫌気性濾過経過レポート

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