なぜ黒い?

 クロサンショウウオは、幼体時代には雪の粉を振りまいたようなきれいな白斑模様がありますが、上陸後2年もすれば黒くなってきます。

 クロサンショウウオが黒くなる理由のひとつは、植物の葉っぱがなぜ緑色に見えるのか、ということがヒントになります。
 ”見える”ということは、物体が反射した光が見えているのだということ。葉っぱが緑色なのは、緑色の光を反射しているから、すなわち、自分にとって必要でない緑色の光をはね返し、その他の必要な光を吸収しているわけです。

 体の黒いクロサンショウウオは、様々な色(波長)の光を吸収していることになります。光に対する要求が思いのほか強いのか、あるいは、光はある程度必要だけれども暗がりが大好き。それで、光の吸収効率を上げるために黒いのかもしれません。

黒さの重要性

 光の吸収効率が良いことは、特に産卵期に重要な意味を持つと思われます。
 クロサンショウウオは早春に産卵するので、まだ雪の残る中、産卵池まで移動しなければなりません(ただし冬眠前までにある程度は池のそばまで集まってきているようです)。雪の上を移動中に凍死してしまったサンショウウオの写真を見たことがありますが、こういうときに、体が黒いほうが少しでも体温を上げるのに役立つはずです。

 もっとも、太陽光に含まれるのは可視光ばかりではありませんし、日焼けのように、黒い皮膚で日光を十分に吸収して、その下まで強い日差しを通さない(サングラスのような)意味もあるでしょう。もちろん、保護色としての役割もあるはずです。
 光は、飼育方法(照明をどうするか)の重要点ですし、いずれ詳しい話がわかったら改めて報告します。

 さて唐突ですが、皆さんの周りにも美人が大勢いることでしょう。考えてみると、美人=美しい光をすべて反射してしまっている人です。逆に不美人は美しい光を吸収し、美しくない光は、はね返している人。真に美しいのはどっちなのか?「人を外見で判断してはいけない」とは実はこういうことなのです(?)。

幼体の模様の理由 

 クロサンショウウオの幼体には写真(左)のような白い模様があります。


幼体

成体

 動物の体にある模様といえば、周囲の環境にたくみに隠れるための保護色や、毒々しい警戒色などが思い浮かびますが、クロサンショウウオの幼体は、どちらにも当てはまらない。いったい何の意味があるのでしょう?幼体のほうが目立つ姿をしているのはナゼなんでしょう?そして、成長するにつれて目立たない色になってくるのはナゼなんでしょう?

 こう考えることができます。「幼体は、敵に見つかりやすいように目立つ模様をしている」と。

 海水魚の稚魚などが、孵化した端からどんどん他の魚に食べられていく様子をTV番組等でご存知でしょう。これは魚にしてみれば、子孫を残すためにたくさん卵を産んでいるつもりでも、逆の見方をすれば、他の魚の餌のためにたくさん産んでいる状況です。残酷なようでも、そういう生物の相互関係で自然界が成り立っています。

 クロサンショウウオの幼体の場合、

  1. 目立つ模様で他の動物の餌になる。

  2. 生き残ったものだけが成体になる。

  3. 成体は子孫を残すために生き残る必要から、地味で目立たない色に。

 例えば、クロサンショウウオの卵のうからは普通40匹ほどの子供が生まれます。仮に、オスメス2匹の親サンショウウオが一生のうちに10回産卵するとすれば、全部で400匹を産むことになります。そのうちのわずか2匹だけが生き残り、残りの398匹は何らかの原因で命を落とすのが、個体数を保つという意味では正常な状態なわけです。
 以上はあくまでもたとえ話で、実際にはこれほど単純なものではありませんが、生存競争の厳しさは想像いただけるでしょう。

 このように、幼生時代の模様は、自然淘汰を進めて適正な個体数になるための大自然の巧妙な仕組みのひとつ。あの地味すぎず派手すぎない模様のおかげで、食べられる数と生き残る数のバランスが、ちょうど良い具合に保たれているのではないでしょうか。

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