サドサンショウウオと出会った!

 2001年9月6日。この日私は前日から泊りがけで佐渡島の森林の植生調査に来ていました(新潟市から佐渡島までジェットフォイルで1時間です)。

 調査地は佐渡郡赤泊村。水田の脇をすり抜けシロダモという常緑広葉樹の森に分け入った、尾根すじ近くの傾斜約30度もある斜面でした。

 佐渡といえば、そう、クロサンショウウオのシノニム(同じ生き物に別の名前が付けられたもの)である、サドサンショウウオがいます。いつかぜひ見てみたいと思っていたサンショウウオです。

サドサンショウウオとは

 サドサンショウウオはクロサンショウウオの近縁だが頭骨や卵のうが違うとして、1940年、佐渡にしかいない独立種Hynobius sadoensis(ヒノビウス サドエンシス)として記載されました。
 しかし、その後の電気泳動法による酵素タンパク組成の調査結果からクロサンショウウオとほとんど区別できないことがわかりました。むしろ、本土のクロサンショウウオ内にはもっと遺伝的に特異な個体群があるのだそうです。
(ちなみに、佐渡島は15万年以上前に本土から分離しています。)

参考文献・・・動物達の地球5(朝日新聞社)・松井正文「両生類の進化」東京大学出版会

奇跡の出会い

 さて、時刻も午後3時をまわり植生調査のほうもほとんど完了した頃、少し空き時間ができた私は、斜面の落ち葉をかき分けて、黙々とサドサンショウウオを探し始めました。尾根状の地形は乾燥しやすいため、湿潤を好むサンショウウオがいるとも思えませんでしたが、足元に広がる深く積もった落ち葉の層をどかすと十分に湿った森林土壌が現れ、そこにはモグラやネズミ、ミミズなどが掘ったと思われる穴がいたるところに。いい感じです。

 ところが、30分ほど一生懸命探し続けたもののまったく見つかりません。出てくるのはミミズばかり。やっぱりいないか・・・。一緒に来ていた職場の人たちも、それぞれの調査が終わったようです。ダメだ時間切れ、タイムオーバーです。

そのとき!

 奇跡が起こったのは、リュックサックの所に座り込んであきらめて帰り支度を始めたときでした。

「あああああっ、サドサンショウウオだ!!」

 喉の奥から叫び声がもれました。なんと土にまみれたサドサンショウウオのりっぱな成体がすぐ目の前の落ち葉の上にいるのです。ほっぺをつねったほうがいいだろうか!?


つ、ついに見つけた!(感涙)

 私に会うために自分から出てきてくれたとしか思えないほどの、そうでなければ神様が目の前に置いてくれたと信じるしかないほどの、それとも我が家のクロサンショウウオの一匹がリュックに潜んで佐渡までついてきた!?などとばかばかしい心配をしたほどの・・・そんな夢のような出会いでした。


軍手の上でパチリ。上と同じ個体です。

 憧れのサドサンショウウオを手に取ってしばし観察。
 全長13cmほど。オスと思われます。よく太っていて穏やかな顔つき。意外にも、野生で生き残ってきたワイルドさというものを微塵も感じさせません。我が家で飼育中のクロサンショウウオとも全然見分けがつきませんでした。

無事に生きろよ!

 尾根の近くにサンショウウオがいたことは本当に意外でした。林内は20メートル前後のシロダモの高木(こんな大きなシロダモは珍しい。気候や土壌が良いのでしょう)が優先する森林で、直射日光はさえぎられていたものの開放感のある広葉樹林。倒木にはゴムタケという不気味な食用キノコがたくさん生えていました。
 なお、近くには沼地などの止水もありませんでしたので、数十メートル斜面を下ったところの小沢か、200メートル近く離れた水田が産卵場所と思われます。

 写真を撮った後、無事に生きろよ!と祈りつつ落ち葉の上に帰しました。すると、少し目を離した間に姿が落ち葉と一体化してしまい、もうどこにいるのかわからない。
 やっぱり、この度見つけることができたのは何か不思議な導きがあったとしか思えないです。

 サドサンショウウオに出会えたよろこびのあまり、下山の最中も、車に乗って港に着くまでも、港からジェットフォイルで波に揺られている間も、ずっと頭がボーっとしていました。この日の感動はどんなに言葉を重ねても表すことができません。

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