冬眠のさせ方について

 クロサンショウウオの冬眠のさせ方についてアイデアをまとめました。
注)私は飼育中のクロサンショウウオを実際に冬眠させた経験がないので、あくまでも”案”ということで。

冬眠ケース

 自然下のクロサンショウウオは土の中や倒木の下など、外気の影響を受けにくい場所で冬眠(越冬)するそうです。そして、寒くなるにしたがって、より寒さの影響を受けにくい場所(土の深いところ)へ移動していくそうです。
 このような自然界での状況を模して、深さのある冬眠用のケースを用意します。

 深さは理想的には1m程度(森林の土壌厚は平均すれば1mくらい)。これを入れるケースには、生ゴミ用のゴミ箱などが流用できるので、ホームセンターに行って手ごろなサイズのものを物色してきます(抗菌加工されていないものを選ぶ)。
 ただし、平均1mの土壌厚といっても、15cm程度より深い部分の土は、有機物を含まないかなり硬いものになってきます。まあ、20cm程度の厚さがあれば十分なのかもしれません。


冬眠ケース。
森林土壌を柱状に切り取った感じ。

 冬眠ケースの周囲は発泡スチロール等の断熱材で覆って外気温の影響が内部に及ばないようにします。フタも断熱性の高いものを用意します(冬眠中は酸素の消費量も少なくなることなどから、最小限の通気性だけ確保)。
 また、底面には小さな穴を数箇所開け、下には水を溜めた受け皿を敷きます(植木鉢のイメージ)。

土を入れる

 冬眠ケース内には、腐葉土など、潜り込みやすい土を入れます。ある程度押し固めるようにして土を詰め、その後、長い棒をプスプスと刺してサンショウウオを土中に導く道筋を作っておきます(野生ではモグラやネズミが掘った穴を隠れ家にすることがあるという)。
 また、流木などをいくつか埋めておくと、その下が物に身を寄せたがるサンショウウオにとって快適なねぐらになるはずです。

ケースの置き場所

 冬眠ケースは、屋内の一番涼しく温度変化の少ない場所に置きます(例:物置、階段の下、廊下の端っこなど。※屋外には置かない。水受けの水が凍って土が下部から凍結する恐れあり。
 なお、地域によっては、面倒な方法を考えずとも屋外に放置することでたやすく越冬させることが可能と思いますが、あくまでも人工的な環境で、日常飼育の一環として管理・冬眠させることに、飼育の楽しみ・飼育技術の向上などの意義があるという考えです。

いつ冬眠させるか

 雪が根雪になる(前に降った雪が解ける前に次の雪が降る)季節になったら冬眠させます。雪が積もらない地方では、まあそのくらい寒くなったらっつう感じでひとつ。(あくまでも飼育下での話。野生下では、もっと早い時期に安全な冬眠場所への移動を終えていなければならない。)

温度の管理

 土の上に保冷材や凍らせたペットボトルを敷き詰めて、フタをします。定期的に新たに凍らせたものと取り替えます。これは、根雪による温度管理をイメージしています。あとはサンショウウオが自ら快適な冬眠温度の深さまで潜ってくれるでしょう。
 中途半端な温度で冬眠させるとエネルギーを消耗して弱らせてしまうので、キッチリ冷やしましょう。

 冬眠の開始時は保冷材を1つから初め、少しずつ保冷材の数を増やしていきます。逆に、冬眠から目覚めさせるときは、保冷材の数を徐々に減らしていきます。(2週間程度かけてゆっくり変化させること。)

湿度の管理

 観葉植物に水をやるイメージで、底面に敷いた受け皿に常に水を満たしておくようにします。こうすることで毛細管現象によりコンスタントに土に水分を補給でき、難しい冬眠中の湿度管理が格段に楽になると思います。
 保温(保冷)のため通気性のあまり良くないフタをするので、乾燥速度はゆっくりですが、逆に油断して水を切らすことのないよう、くれぐれも注意してください。冬眠中に干からびさせて死なせてしなう事故をよく耳にします。
 たまに指を土に差し込んでみて、湿り気が感じられないようであれば、上部からも散水すればよいと思います。ケース底面に穴を開けてあるので、土が水浸しになる心配はいりません。

冬眠の期間

 8〜10週間を目安とします。これは、徐々に冷やしていく期間と、徐々に温度を上げていく期間を含めたものです(下図参照)。

 なお、冬眠期間中は一切餌を与えません。

冷蔵庫による冬眠方法

 もっと簡単なのは、飼育ケースごと冷蔵庫に入れて冷やす方法です。ただし、冷蔵庫の中はかなり乾燥しやすいので、湿度の維持に特に注意を要します。

 冷蔵庫で管理する場合は、4℃〜6℃を設定温度とします。

 下限を4℃としたのは、以下の理由によります。
 水面が氷で覆われた池では、水の比重の関係で水底の温度が4℃に保たれています。クロサンショウウオの越冬幼生はこのような池で冬を越すことから、成体もこの温度までならば安全であると考え、これを冬眠中の最低温度としました。
 また、過去の飼育で飼育温度7℃で顕著に食欲が減少することを経験しました。まったく餌を摂らない状態にするためにはさらに低い温度が必要であると考え、6℃を上限としました。

 以上、冬眠方法に関するアイデアについて取りまとめました。あくまでも実績のない方法なので、実際に行う際は、どこかに問題点・落とし穴がないか十分再検討が必要。

冬眠前の給餌について

 食欲の秋といいますが、冬を越すエネルギーを体内に蓄積させるという観点から、冬眠の前に、どのような給餌に配慮すべきなのか考えてみました。

 体重30gのサンショウウオを5℃で60日間冬眠させるとした場合、冬眠期間中に必要なエネルギーは、

0.04kcal/day×60day=2.4kcal

です(参考)。このエネルギーを体重に換算すると、

2.4kcal÷4kcal/g=0.6g

 したがって、冬眠期間中に0.6g体重が減るという計算になります。これは、体重60キロの人間にすれば、1.2キロの体重減少に相当します。思ったより少ないのではないでしょうか?

 冬眠中に減少する体重のうち、半分程度を冬眠前に増量しておけば、冬眠から明けた後の体力の回復がよりスムーズに行われると考えれば、

0.6g÷2=0.3g

が、冬眠に備えた増量の目安になります。

 この値は大雑把な仮定に基づく参考数値でしかありませんが、冬眠前だからといって極端に太らせる必要がないことはイメージできます。しっかりとした低温で冬眠させる限りにおいては、夏場より気持ち多めか同程度の餌で十分といえそうです(そもそも秋は気温が下がり代謝が下がっているので、同じ給餌量でも夏より体重が増加しやすい)。

 ただし、注意が必要なのは、夏場に食欲がなくすでに体重が減ってしまっている場合です(野生下のサンショウウオは夏眠を行うので、夏場に痩せることは特別なことではない)。この場合、まずは体重を元に戻し、その上で冬眠のためにさらに増量するという2段階で考える必要があります。
 野生下と違い、飼育下では、適当な温度管理をしていれば夏場に痩せ細ってしまうようなことは少ないのですが、もしそうでなければ、回復のために高カロリーの給餌に配慮しなければなりません。体力がないと冬眠中に命を落とすことも多いそうなので、その年に冬眠させるかさせないかについても、よく考えて決めてください。

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