どうして保護するの?

 自然保護に対する関心は日々高まってきています。公共事業も「自然にやさしい」「環境に配慮」がキーワードになりました。現在、環境基本法をベースに様々な環境関連法が整備され施策が展開されています。

保護する理由

 「自然を大切にしないと、最後は人類につけがまわってくる」ということがよく言われます。
 一般に、自然の価値は人間にとっての「環境的財産」「精神的財産」「物質的財産」の3つの視点から説明されます。

環境的財産

人間は、気候の安定化・土壌の形成・水源のかん養・水質の浄化など、さまざまな自然の作用によって形成された環境を生存基盤としている。

精神的財産

人間は、豊かな自然環境により精神的に癒され、また、文化・感性を育んでいる。

物質的財産

人間は、食料、衣類、医薬品、エネルギー資源などを自然から得て生活している。

 ところが、このような考えの下、ある自然保護団体に対して「その生き物がいなくなると人間生活にどんな問題が生じるのか?」と問い詰めてきた役人がいたそうです。大した影響はないというのです。そんな理論がまかり通るなら、それを自分や自分の家族に置き換えて考えればどうでしょう。確かに人間一人がいなくなっても、社会全体としてみれば大した影響はないかもしれません。ならば、その人の命は必要ないことになるのでしょうか。

あまい世の中作り

 しかし、現実は厳しい。倫理観・道徳観だけで自然保護を訴えても「お前の考えはあまい」という一言で押しつぶされてしまう場面が多々あります。しかも「厳しいほうがえらい」といった風潮さえあります。でも、考えてみてください。厳しい世の中よりも、あまい世の中の方が断然良いとは思いませんか?

 自然保護の必要性についてもそうですが、何でもかんでも根拠をふりかざし論理性を重視することで、自分で自分の首をしめ、この世の中を厳しくて住みにくい世の中にしてきました。
 これから大切なことは、もっと物事に対する態度をなまぬるくして、人にあまく、自分にもあまくなることです。人殺しが悪い理由を説明しろ、という人があまりいないように、自然を保護する理由を科学で語ることはなじまない、それが当然だと思える世の中になってほしいと思います。

クロサンショウウオの現状

 クロサンショウウオは新潟県のレッドデータブックで準絶滅危惧種に指定されています。しかし、隠れ住む生き物なので棲息の確認が不充分となり、公共事業等で気づかぬうちに生息地がつぶされてしまうことが多くあります。いいえ、生息が確認できたとしても、”準”絶滅危惧種の場合はあまり重要視されず、十分な配慮なしに事業が実施されてしまうのが実情。

 現在、クロサンショウウオの生息地は、歯止めなく、どんどん減少しています。

 開発行為における環境配慮の5原則(ミティゲーション5原則)
「1.回避(avoidance)」:繁殖地など生態系の拠点は現状のまま保全する。
「2.最小化(minimization)」:近自然型工法などにより影響を最小化する。
「3.修正(rectification)」:ダムに魚道をつけるなど、影響を修正する。
「4.影響の軽減/除去(reduction/elimination)」:開発期間中、一時的に生物を捕獲・移動するなどし、将来的に生じる影響を軽減、除去する。
「5.代償(compensation)」:代わりの環境を用意し、影響を代償する。
※1がもっとも優先されるべき方法であり、1がダメなら2、2がダメなら3と、順に検討する。5の代償は最終手段。しかし、日本では一番最初に5を考える傾向がある。

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