2003年10月

2003.10. 8 ホクリクサンショウウオを訪ねて【その2】
2003.10.19 ホクリクサンショウウオを訪ねて【その3】

2003.10. 8 ホクリクサンショウウオを訪ねて【その2】

(前・後編で紹介する予定でしたが、前編・その2・その3・その4の4回に分けてお届けすることに変更。思ったよりボリューム出ちゃって・・・。)

 金沢にもう1泊し、早起きしてこの日の目的地羽咋市に向かう電車に乗りました(金沢駅→羽咋駅:およそ1時間)。一日かけて市内のホクリクサンショウウオ保護施設の見学です。楽しみだ!

見学箇所

 事前に羽咋市歴史民俗資料館の方から情報をいただき、見学箇所を次の3つに決めました。

  1. ホクリクサンショウウオが初めて発見された越路野小学校

  2. 産卵場所として保護されている神社

  3. 眉丈台地自然緑地公園内に造成された人口の増殖池

 それぞれは駅からの直線距離で3〜4キロくらい。移動手段をどうしようか悩んでいたのですが、ラッキーなことに駅でレンタル自転車を発見(1日1000円)。
 この日、石川県は申し分のない秋晴れ!澄み渡る青空と、涼しくなってきた秋の空気。贅沢すぎるほどのサイクリング日和です(幸せですなぁ・・・)。

サイクリング!

 小学校 → 神社 → 公園

というルートで回ることに決めました。(地図参照)

 やっぱり、最初にホクリクサンショウウオの発見地である小学校を見学するのが粋ってもんでしょう。小学校目指し、いざ出発!

 標識などを目安に自転車を漕ぐことおよそ30分。なぜか反対方向にある神社に到着(核爆)

 あきれた方向音痴ですが、みごと目的地のひとつにたどり着くあたりはさすがだなぁ〜(笑)。

神社

 この神社の手洗場が繁殖場所として保護されているそうです。 しかしそれは庭園的に整備された水場で、とても保護されている産卵場所には見えませんでした(下写真参照)。もしかすると間違った場所を一生懸命観察してきたのかも!?


手洗場のすぐ裏手にある繁殖場所(なのか?)

トウキョウダルマガエル発見

鎮守の森の奥で

 神社の裏手には、鎮守の森として人手を加えることなく保護されてきた原生的な森が広がっていました(国の天然記念物に指定されている)。


自然の美しさに息をのむ・・・

 森の小道を奥に進むと、ひっそりと水面をたたえる神秘的な池が姿を現しました。なんという美しさ・・・。
 こんな池のほとりに腰掛けて、まったりとビールでも飲んだら最高でしょうね。

 ・・・さっそく駅で買っておいた缶ビールを取り出した(最高でした:笑)。

 池の周りには、なだらかな森林が広がっており、池に流れ込む大きな川はありません。背後の眉丈台地に降った雨が細流や湧水となって水を満たしているのでしょう。きっと鎮守の森の中にも、いくつかの湧水ポイントがあるのだと思います。ホクリクサンショウウオは湧水に産卵するタイプのサンショウウオです。

 この場所ですいぶん長い間ぼーっと座って池を眺めていました。人は誰も来ませんでした。うまく言えませんが、ものすごい心の安らぎを感じました。日ごろの小さな悩みやストレスなど、すべて自然の中に吸い込まれていくようでした。この場所にはいつかまた来ます。

ん?

 さて、この日は平日だったためかほとんど参拝者もなく、境内をのんびり散歩したりして優雅な時を過ごしていたのですが。

 ・・・ん?よく見れば、境内にずらーっと並んだ絵馬にはすべてハートマークが描かれているではありませんか。どうやらここは縁結びの神社らしい。

 ずいぶん長々といた私は、売店の巫女さん達に「よほどご利益が欲しい不憫な男」と思われたのではなかろうか。(ガーン!)


青春だなぁ(^^;

 そそくさと神社を後にし、今度は間違うことなく小学校に到着。ホクリクサンショウウオが初めて発見された側溝は、グラウンドの脇にありました。

 次回に続く。

2003.10.19 ホクリクサンショウウオを訪ねて【その3】


越路野小学校全景

 市街地からはずいぶん外れた高台にたたずむ越路野小学校は、2階建てのとても小さな小学校でした。昔ながらの温かみのある古びた校舎に、郷愁の念を禁じえません。上写真中央、車が止めてある裏手でホクリクサンショウウオが初めて発見され、現在は繁殖場所として保護されています。

 突然おじゃましたのにもかかわらず、小学校の先生が案内してくださり、いろいろお話を聞かせてくださいました(ありがとうございました!)。


産卵場所の周りには柵が設けられており、説明看板がある。

説明看板の内容:
『羽咋市指定 天然記念物 ホクリクサンショウウオ
昭和46年に初めて発見され、昭和54年9月7日にアベサンショウウオとして羽咋市の天然記念物に指定されました。その後、昭和59年8月に学会においてアベサンショウウオと異なる新種「日本名ホクリクサンショウウオ(学名Hynobius Takedai)として命名されたものです。成体は全長10cm位で茶褐色、目は突出して夜行性。ミミズなどを食べています。産卵期は2月から4月頃までで、メスの一腹から渦巻き状の卵のう一対(平均70卵)が、湧水中に産みつけられます。フ化するのは産卵後約45日で、変態して陸上生活をするようになるのは更に100日程かかります。眉丈山一体から中能登にかけて生息しています。
羽咋市教育委員会

繁殖場所の様子

 保護されているのは、崖のすぐ下に広がるネコの額ほどの草藪です。ここに、背後の崖から染み出した湧き水が溜まり、ちょっとした湿地が形成されている・・・らしいのですが、今の季節は草がぼうぼうに生えていて、どのくらいの水があるのかは観察できず(植物の知識さえあれば、生えている種類から土壌の状態など推定できるのだが・・・)。


草ボーボー

 毎年、春先に産卵のため集まってきて、6月くらいまでは姿を見ることができるそうです。(残念ながら、今年はどこから入り込んだのかアメリカザリガニが大量発生して、ホクリクサンショウウオの幼生は全滅してしまったそうです。)

 奥にもうひとつ柵が見えますが、こちらは防火水槽の周りに設けられているものです。
 防火水槽では、いっさい産卵はみられないとのこと。これだけ隣接している水場なのに、何か産卵条件を満たしていないのでしょうか?

側溝

 柵の手前にあるコンクリートの側溝にも産卵するそうです。

 側溝の水も全て湧き水。
 水深はわずか1〜2cm程度でした。産卵期の春先は増水するのだろうと思いきや、年間を通じて、水位はほとんど変わらないとのこと。
 こんなに浅い水場が産卵場所だとは!(なるほど、水深がかなりある防火水槽の方には産卵しないわけです。)


先生が探してくれたがサンショウウオは見つからず。

側溝の中の様子

分散能力について

 初めにご紹介したとおり、繁殖場所はグラウンド脇のわずかな面積。その裏手は切り立った崖になっています。
 このことは、変態して上陸後に分散する経路がほとんど無いことを意味します(身を隠すもののない広いグラウンドを横断するとは考えにくいので)。

 このような環境で子孫を繁栄し生き続けてきたホクリクサンショウウオという生き物は、もともとサンショウウオの仲間の中でも特に分散能力が乏しい種類なのかもしれません。
 そうであれば、能登半島など一部の狭い地域にしか分布していない訳も理解できます。そして、どんなに小さな繁殖地であっても、それを破壊することがどれほど深刻なダメージを与えることになるか想像することができます。

2年後・・・

 最後に先生から大変さみしいお話を伺いました。
 越路野小学校は後2年で廃校になるそうです・・・。
 小学校の敷地はすべて借地のため、廃校後は元の所有者の土地に戻るそうです。この繁殖場所がどうなってしまうのか、詳しいことはまだわかりません。


 ここまでは、自然の繁殖場所を柵で囲うなどして保護している例についてお話しました。次回は最終話として、人工的に造成された増殖池の話題をお届けします。

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