むくみ
排泄機能の異常のため体液を十分に排泄できず体の中に充満してしまうと、”むくみ”を生じます。厳密には、腹腔内に水がたまる「腹水症」と細胞組織間に水がたまる「水腫」とに分かれますが、両者は同時に起こることが多いそうです。そこで、このページではまとめて”むくみ”としました。
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成体に生じた”むくみ”
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特に、孵化前および孵化後の幼生に多くみられ、集団的に発症した例をたびたび耳にします。お腹がふくれすぎて上手に泳げなくなったり、特にひどいものでは、腹腔の内側の膜(腹壁)が破裂してしまうことまであるそうです。
原因
敗血症や寄生虫感染によって、排泄機能に障害が生じたことが原因となります。
もうひとつの大きな原因は、排泄をつかさどる腎機能の発達障害です。サンショウウオの腎機能は、はじめ、前腎という器官が担っています。成長にしたがって前腎は退化し、替わりに中腎という器官が発達して役目を引き継ぎます(以後の一生、中腎がサンショウウオにとっての腎臓として働く)。
クロサンショウウオの個体発生と腎臓形成
(富山大学大学院理工学研究科・熊野智子さんの講演@第8回両生類自然史フォーラムより)
ある研究では、孵化前に死亡した幼生の死亡原因の7割以上が、前腎の機能障害(特に前腎輸管の発育異常)だったとあります。また、孵化後においても4割近くの幼生にむくみが発生し、これは、前腎の退化と中腎の発達のタイミングが何らかの原因でずれて機能の引継ぎがうまくいかなかったことが主な理由であると報告しています。
そのほか、低タンパク血症や低カルシウム血症などの栄養障害も原因となるそうです。
治療
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原因によって治療方法が異なることに注意。よ〜く観察して、自分なりに治療の方向を見定めることが大切だと思います。
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何はさておき、サプリメントを活用する等により栄養面の改善に努力。
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感染症であれば、”むくみ”以外にも何か症状が見つかるかもしれません。その場合、他のページで紹介している感染症の治療を試みます。
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腎機能の発達障害であれば、むくみ発生から数日で自然回復する可能性があります。しかし、回復しないものは日増しに悪化して10日以内に死亡する例が多いようです。
どうして発達障害が生じるのかは残念ながら分かっていません。そのため、対症療法になりますが、リンゲル液(下参照)に浸けたり、針でお腹に穴を開け一時的に水を抜いたりして延命を図り、自然回復を祈ることになります。
【両生類用のリンゲル液の作り方】
1リットルの蒸留水に、以下を混ぜる。
塩化ナトリウム6.5g、塩化カリウム0.42g、塩化カルシウム0.25 g |
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