栄養障害
栄養障害の代表的なものが、カルシウム、リン、ビタミンD3の過不足による「低カルシウム血症」や「代謝性骨疾患(MDB:Metabolic
Bone Disease)」です。
「低カルシウム血症」の主な症状は次のとおり。
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筋肉のけいれん、ひきつけ(テタニー症)
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腸内ガスによるむくみや浮腫、腹水
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胃、腸、総排出腔などが飛び出る
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腹水症と思われる症状
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「代謝性骨疾患」の主な症状は次のとおり。
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下あごの奇形
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手足を広げるなど、不自然な姿勢をとる
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背骨が曲がる
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動くことを嫌がる
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大腿骨や上腕骨などの骨折
代謝性骨疾患と思われる症状
下あごの右側方向へのゆがみが見られる
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同じく、正面から見た様子
右下あごが突出し、逆に左下あごが凹んでいる
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原因
次の3種類の栄養の過不足が、これらの病気の主要な原因となります。
- カルシウム
- リン
- ビタミンD3
カルシウムとリンは、「骨」の主成分であるリン酸カルシウムを構成する欠かせないミネラルであり、また、カルシウムは筋肉の収縮に必要なミネラルでもあります。ビタミンD3は、腸管におけるカルシウムの吸収や、腎臓におけるカルシウムの再吸収を促進する働きがあります。
餌として理想的なカルシウム量は総給餌量のうち0.5%〜2%(乾燥重量)で、かつ、カルシウム対リンの比率が1.5:1程度だといわれていますが、コオロギやミールワームなどの入手しやすいエサ用昆虫はカルシウムが少なく、逆にリンが多すぎます(参考:活餌の栄養価)。このことが、低カルシウム血症等が世の飼育個体にはびこる潜在要因を成しています。
治療
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何よりも、まずは普段の給餌においてガットローディングやダスティングを活用し、予防することが肝心。
- 栄養強化
症状が出た場合は、毎日、体重kgあたり1mlのグルコン酸カルシウムなどを主成分としたカルシウム補給製剤(リンを含むリン酸カルシウムがベースのものは避ける)と、ごくわずかのビタミンD3(体重10g当たり1〜4iu。ちなみにビタミンD3の1iuは0.025μg)を飲ませます。
餌と一緒に与えるのが最も手軽で現実的です。ただし、ガットローディングやダスティングでは摂取量がアバウトになり、また、「過剰な給餌は過剰なリンの供給につながる」ため、症状の悪化が懸念されます。そのため、細いスティック等を用い給餌の要領で直接口内に栄養剤を投入するほうがベターではありますが、微量栄養剤の計量精度の問題もあり、切りがなくなるので、ある程度の割切りが必要。
なお、症状の度合いによっては、スポイトなどで半ば強制的に与えるといった方法もやむなしと思われます。
ちなみに、グルコン酸カルシウムは、水に溶けやすいカルシウム化合物です。吸収率の高いアミノ酸キレートカルシウムも有効かもしれません。
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皮膚から吸収させる場合
吸収効率はあまり良くないようですが、口から与えるのが難しい場合は、毎日、100mL当たり2g強(最大5gまで)のグルコン酸カルシウムとわずかのビタミンD3(200〜300IU)を溶かし込んだ水に、1〜2時間程度浸けるという方法があります(ビタミンD3は脂溶性なので、うまく水に馴染むの?という疑問はあります)。
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症状を十分に改善させるため、これらの栄養補給は、2ヶ月以上継続することが推奨されています。
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紫外線灯を設置
ビタミンD3は食べ物からだけでなく、日光浴により体内でも合成されますが、サンショウウオは日光浴を喜ばない生き物であるにも関わらず、波長280〜310nmの紫外線灯(UV-B)を局所的に設置して好きなときに光を浴びれるようにしておくことが、治療に有効だそうです。ただし、強すぎる光は禁物で、角膜が不透明になったり紅斑が現れたり、粘液過多などの異常が見られたら、すぐに撤去しなければなりません。
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