飼育設備の実例

 成体の飼育設備に関する水槽設備及び維持管理設備で解説した要点を踏まえ、「90cmらんちゅう水槽」を用いたサンショウウオの飼育設備の例を紹介します。殺菌灯と産卵に備え水場を設けていることを除き、スタンダードな設備です。


水槽設備の一例。

システム詳細図。

解説

水槽

 8匹のフルサイズ成体をゆったり飼育するため、90cm水槽としました。今回採用した「らんちゅう水槽」は、上から鑑賞することの多いランチュウを飼育するときに使う高さの低い水槽です(90cm標準水槽の高さ45cmに対し、90cmらんちゅう水槽の高さは30cm)。あまり出回っていないので、ショップで注文したり、通信販売で購入することになります。
 サンショウウオは立体活動をしないのでこれで十分。浅くて底まで容易に手が届き、世話がしやすいので気に入っています。
 なお、鑑賞に支障のない背面と左側面は、発泡スチロール系の断熱材で覆ってあります。

床材

 いつもどおりハイドロボールを用いて”厚底”にしています。

 敷き厚は15cmもありますが、実は多少挙げ底をしているので見た目ほど量は使っていません。

 また、床材内に”よどみ”ができないよう、濾過水の流れにも配慮しています(後述)。


内部に設けた挙げ底

 ちなみに、通常の砂や砂利をこれほどの厚さで敷くと、たちまち汚れが蓄積して大変なことになります!”厚底”は、ハイドロボールのように粒が大きく、水の通りが良い床材だからこそなせる業ですのでご注意を・・・。

シェルター(隠れ家)

 流木を用いて、底面を覆いつくすほどびっしりと並べています。

 ただし、こんなにたくさんシェルターを並べても、実際に利用される数は半分程度か!?
 なにしろサンショウウオは自分の体がギリギリ入るくらいの狭い隙間が大好きで、そうでない流木はシェルターの用を成しません。人気のない流木は、徐々に取り替えていかないと。

フタ

 らんちゅう水槽は背が低くサンショウウオがガラス面をたやすく登りきるので、絶対に脱走することのないよう特に気を使っています。

 フタは、角材をL型金具で固定して頑丈な枠を作り、網戸用ネットを挟み込んで自作しました。

 念のため、普段は枠の上に1.25kgのダンベルプレートを2枚置いて、万が一にもサンショウオが持ち上げることができないようにしています。

 なお、水槽の背が低く蒸れる心配は少ないため、送風ファンは設けませんでした。



 ところで、水槽に入る塩ビ管の隙間を埋めることには、なかなか苦心しました。とりあえず木片を詰め込んで塞いでありますが、紙粘土か何かを用いて、さらにしっかりと塞ぐことも検討しています。→ 紙粘土で塞いで改善しました!

Before    → → →
After
水場

 いつかは産卵させてみたいので、写真のような水場を特別に設けました。底面にテラコッタタイルを敷いて、それを足がかりとして斜めにタイルを被せ「土留め」兼「斜路」としています。斜路の勾配は40°程度と、サンショウウオが上りやすくなっています。

 タイルの設置に当たっては、サンショウウオがタイルの隙間から底床内にもぐりこんで出られなくなることのないよう、ガラス面とぴったり密着させることに注意しました。

 水中には、産卵床として枝状の流木も入れてあります。(いつになったら使われる日がくるのだろうか!?)

濾過

 今回の例では、床材の底からすい込み、左右両側から吐き出す濾過経路を採用しています。ポンプはレイシー水陸両用型ポンプRSD-20(20リットル/分)とし、はじめに示したシステム詳細図のとおり外部濾過器(電源は入れていない)、殺菌灯、水槽用クーラーを経て、水槽内に戻る順としました。

 底床が厚底なので、”よどみ”ができないよう気を使っています。底面には底面濾過パネルを4枚組み合わせたものを敷き、なるべく均等に水が吸い込まれるよう、中央部に塩ビ管で吸込口を設けました。(株)ニッソーのバイオフィルターという底面濾過パネルには、塩ビ管VP16用のエルボがぴったり合う孔があり都合がよいです。
 この上にウールマットを敷いてから、床材を入れています。


底面濾過パネル

 さらに、濾過された水を隅々まで行き渡らせるべく、排水経路を分岐させて水槽の両端に分けています。分岐箇所にはコックを設け、それぞれの水量を調節できるようにしてあります。(このコックで流量を絞ったとき、ポンプ下流に大きな正圧力が生じる。そこに器具を配置すると水漏れの危険度が増すため、通常はポンプ下流に設置する水槽用クーラーを今回は上流に設けた。)


塩ビ管用のコック。

 そして下写真のとおり、水槽左側の陸地部分では煙突から水が湧き上がるように3箇所から、水槽右側の水場部分ではシャワーパイプから、満遍なく注水するようにしました。


吐出口その1 L型とT型の塩ビ管を組み合わせたもの

吐出口その2 シャワーパイプ(右端)

注)後日、左写真の3箇所の煙突状の噴出し口は撤去して、通常のシャワーパイプに変更しました。開口部の径が大きいと、万が一サンショウウオが中に潜り込んで出られなくなると大変だと気がついたので。

 水槽右側のシャワーパイプは長めのホースで導いており、設置場所を自由に変えることができるようにしてあります。産卵期には陸場のほうに移して、産卵を誘発する「降雨」を表現できるという仕掛けです。

 次のページでは、日常の世話について説明します。

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