インターネットで調べたサンショウウオ(成体)の標準的な給餌方法

はじめに

 近年インターネットが広く普及し、さまざまな分野の多岐に渡る情報やおっぱいの写真などをパソコンを用いて容易に入手できるようになった。サンショウウオについても、これまで専門誌を読むか専門店で教えてもらうしかなかった飼育のノウハウを、インターネットで調べることができるようになった。
 それらの情報は、WEBサイト作者本人の実際の飼育経験を基にした生きた情報として参考になる部分が多い。しかしながら、作者それぞれの生活環境や飼育方針に応じて紹介内容は様々であり、『サンショウウオの標準的な飼育方法』といえるものは確立されていない。

 本論では、サンショウウオ(成体)の標準的な給餌方法(餌の与え方)を見つけることを目的として、インターネット上に公開されている情報を収集・分析した結果について述べる。

調査方法

 給餌方法を「餌の種類」「給餌頻度」「給餌量」の3項目に分けて調査した。より多くのWEBサイトが紹介している内容を、より標準度が高いと評価した。例えば、餌の種類としてコオロギが7箇所のWEBサイトで紹介されていたらコオロギは7点、ミミズが5箇所のWEBサイトで紹介されていたらミミズは5点となる。この場合、点数の高いコオロギが、ミミズより標準的な餌である。

 調査対象は次の条件を満たすWEBサイトとし、ネットサーフィン及び検索エンジンを利用して多くのWEBサイトからの情報収集に努めた(表1)。

  • 飼育方法を紹介した特定のページや見出しが存在するもの。したがって、飼育日記やブログに書かれた内容は除外した。

  • 個人の趣味やペットとしての飼育方法に関するもの。したがって、水族館や研究材料としての飼育については除外した。

  • 日本に住む小型サンショウウオの飼育方法として参考にできるもの。したがって、生活様式が大きく異なる種類(オオサンショウウオ、イモリ、ウーパールーパー、ウーピーゴールドバーグなど)は除外した。

  • 日本語で記述されたもの。

表1 調査対象としたWEBサイト.並びはタイムスタンプの古い順.
タイトル URL タイムスタンプ
山椒魚 http://www.avis.ne.jp/~hide-y/ 2000/07/22 22:15
カスミサンショウウオの観察記録 http://www1.cncm.ne.jp/~itoyama/kansatu/kasumi01.html 2005/09/12 23:33
びっきぃとやまどじょう http://www.hkr.ne.jp/~rieokun/ 2006/07/29 18:32
パトロン有尾類館 http://www3.kitanet.ne.jp/~hynobius/ 2006/08/03 22:05
トウキョウサンショウウオ http://www.p-sys.net/iroiro/salamandar/ 2006/08/15 22:07
かわいい☆クロサンショウウオ http://xto.be/ 2006/09/24 20:45
あびこ自然倶楽部 http://www.gem.hi-ho.ne.jp/abiko-nature/ 2006/10/21 16:07
日本産サンショウウオと飼育 http://sansyo.info/ 2006/10/22 12:12
Dr. GRUMMAN's HERPETARIUM http://www.geocities.co.jp/HeartLand/3108/herpetarium.html 不明
Nature,Friend http://www.geocities.jp/yanyan3576/ 不明
1)タイトルは、トップページ又はサンショウウオ関連コンテンツのトップページのものである。
2)タイムスタンプは調査時点におけるURLに示したWEBページのタイムスタンプであり、実際に調査した個々のコンテンツが含まれるWEBページのタイムスタンプではない。また、「不明」は、タイムスタンプが正常に取得できなかったものであるが、調査時点は2006/10/22 10:19である。

 なお、本調査における標準度の高さは、優劣の程度を表すものではないということを念のため申し添える。標準的とは、一般的あるいは並、普通であることを意味し、その優劣については、飼い主の生活環境等に応じて様々に定まる。

餌の種類

 餌の種類については、今回調査した10サイト全てで紹介されていた。
 集計にあたっては、一般的にみて同様に取り扱って差し支えないと考えられるものを1種類にまとめて集計した。例えば、フタホシコオロギとイエコオロギは「コオロギ類」としてひとくくりとしたし、カメや鑑賞魚用の各種人工飼料は、「人工飼料類」としてまとめて集計した(表2)。この種類のまとめ方は主観を含んでおり異論はあると思われるが、傾向を捉えるうえで支障ないものとなるよう留意した。
 なお、集計対象は普段与えている餌であり、実験的に与えたものは除外した。

表2 類の内訳
区分 内訳
ワラジムシ類 ワラジムシ、ホソワラジムシ、フトワラジムシ、シロワラジムシ、ヒメフナムシ、ダンゴムシ
コオロギ類 コオロギ、フタホシコオロギ、イエコオロギ
冷凍飼料類 アカムシ、イトミミズ、ブラインシュリンプ、ミジンコ
ブドウムシ類 ハニーワーム、ブドウムシ、ブドウスカシバ(幼虫)、クリムシ
ミミズ類 ミミズ、ドバミミズ、フトミミズ、シマミミズ、アカミミズ
人工飼料類 レプトミン、カメ用飼料、観賞魚用飼料、ディスカスハンバーグ
乾燥飼料類 アカムシ、イトミミズ、ミジンコ、ミミズ
その他イモムシ類 ヨトウムシ、カイコ、甲虫の幼虫
刺身類 むきエビ、刺身、川魚
精肉類 豚肉、牛肉、鶏肉、レバー、ハツ
トビムシ類 トビムシ、シロトビムシ、フシトビムシ

集計結果

 餌の種類の集計結果は、次のとおりであった。

図1 餌の種類.横軸はその餌を紹介しているサイト数.

 もっとも標準的な餌は、10サイト中から8点を集めたワラジムシ類であった。コオロギ類冷凍飼料類が7点でそれに続いた(写真1,2,3)。


写真1 ワラジムシ


写真2 フタホシコオロギ


写真3 冷凍アカムシ

 餌の種類数は、全部で32種類であった。これは、前述のとおり、同様の種類をひとくくりにして集計したものであるから、内訳を考慮すると合計65種類を数える。
 具体的なデータはないが、これは一般的なペットに与える餌の種類数としては、かなり多いほうであると思われる。少なくとも、我が家の献立より多い。

 活きた餌(活餌)と活きていない餌(死餌及び加工品)とで見ると、活餌が3/4を占めていた(図2)。種類のまとめ方次第でこの割合は変わるので数値そのものに意味はないが、活餌を多く用いている傾向がみられた。


図2 餌の生死.

主食について

 特に主食として特定の餌を紹介していたのは、10サイト中、6サイトであった。主食の集計結果を図3に示す。


図3 主食の種類.横軸はその餌を主食として紹介しているサイト数.

写真4 ブドウムシ

 冷凍アカムシブドウムシが共に2点でトップであった。餌の種類として最も多くのWEBサイトで紹介されていたワラジムシは、主食としては、1サイトからの紹介に止まった。

 入手手段で見ると、ペットショップや通信販売で購入できる餌が8割であった(図4)。販売ものは季節を問わずコンスタントに入手しやすいことや、自分で採取するのが面倒くさいことが理由と思われる。


図4 入手手段.

 また、活きた餌(活餌)と活きていない餌(死餌及び加工品)とで見ると、主食においても3/4が活餌であり(図5)、やはり活餌を多く利用している傾向がみられた。


図5 餌の生死.

給餌頻度

 給餌頻度については、10サイト中、5サイトで紹介されていた。1週間あたりに換算した給餌回数を、図6に示す。「週に1〜2回」のように幅を持って示してあった場合には、1回及び2回のそれぞれに1点を加算する集計方法とした。
 最も多かったのは週2回与えるというもので、平均値としては週2.11回であった。


図6 1週間あたりの給餌回数.縦軸はその回数を紹介しているサイト数.

給餌量

 給餌量については、3サイトからの紹介に止まった。それぞれの内容は、「食べなくなるまで」(山椒魚)、「餌への反応が鈍る程度」(かわいい☆クロサンショウウオ)、「個体の大きさや季節により変動する。基本的には満腹すると興味を示さなくなる」(Dr. GRUMMAN's HERPETARIUM)であった。
 具体的な数値としては、かわいい☆クロサンショウウオに基礎代謝を目安に給餌量を決定した例がある(http://xto.be/breeding/metabolic.htm)。しかし、温度と体重及び餌のカロリーを把握する必要があり、利用しやすいものにはなっていない。

結論

 今回の調査の結果、サンショウウオ(成体)の給餌方法に関するインターネット上での標準は、

(1)冷凍アカムシ・ブドウムシをメインに、ワラジムシ・コオロギ等様々な種類の餌を、

(2)週に2回、

(3)食べるだけ与える。

というものであることが分かった。また、慣れない文章を書き上げるのは大変苦労するということも分かった。

 今回の調査結果は、これからのサンショウウオ飼育にひとつの指針を与えると思われる。ただし、標準的な飼育方法は常に改善され、変化していくものである。インターネットには、本などの印刷物に比べて情報の更新が行いやすいという利点がある。今後、さらに優れた飼育方法が多くのWEBサイトで紹介され、より良い標準が確立されていくことが期待される。

 最後に、サンショウウオの飼育について大変有益な情報を発信している、本調査の対象であるWEBサイト作者の皆様に、深い感謝の念を表しておきたい。

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