ドライタワー経過レポート

1999. 8.10 順調なファーストステップ
1999. 8.31 水量がカギ!?
1999. 9.28 計測値に誤り発覚
1999.10.30 立ち上がり完了
2000. 1.25 まとめ、そして新たなナゾ

1999. 8.10 順調なファーストステップ

 テトラの液体の試薬でアンモニア・亜硝酸の濃度を毎日〜1日おきくらいで計測し、実際に濾過の立ち上がりを調べてみることにしました。

条件

濾過の対象

 ワニガメ水槽。餌は朝テトラレプトミン10粒くらい、夜ザリガニ(4〜5cm)1匹。たまにメダカを水槽内に泳がせています。
 水量は約10リットルで、ほぼ毎日9割を水換え。塩素抜きしていない水道水(勢い良くペットボトルに注いだだけ)で行っています。

濾材

 濾材に採用したアトロボールはただのプラスチック。複雑な形状とはいえ、多孔質濾材とくらべると表面積は相当小さいです。
 こんなツルツルした表面にどれほどのバクテリアが付くのか、ちと不安。200個使いました。


アトロボール

ファーストステップ

 7月20日〜30日までの報告です。濾過の立ち上がりを良く表した、なかなかきれいなグラフとなりました。

有機物 → アンモニア

 立ち上げから3日目にアンモニア濃度(赤い折れ線)がピークを迎えました(1.5mg/l → 生物に非常に危険な状態)。すなわち、カメの排泄物中のアンモニアに加え、汚れをアンモニアに分解するバクテリアが3日間で相当数発生したと考えられます。

アンモニア → 亜硝酸

 アンモニア濃度が高くなってくると、今度は、このアンモニアを亜硝酸に分解するバクテリアが増えてきます。アンモニア濃度のピークから1日遅れて、早くも亜硝酸濃度(青い折れ線)がピークを迎えました(1.0mg/l以上 → ほとんどの魚にとって非常に危険)。アンモニアを亜硝酸に分解するニトロソモナスと呼ばれるバクテリアが働き始めたようです。
 そして7日目でいきなりアンモニア濃度0。1週間でニトロソモナスの十分な発生があったことが分かります。

亜硝酸 → 硝酸塩

 亜硝酸を比較的毒性の少ない硝酸塩に分解するのはニトロバクターと呼ばれるバクテリアです。7月30日、亜硝酸濃度がピークを迎えてから6日目、亜硝酸が急激に減りました。
 立ち上げから11日でニトロバクターが相当数発生したといえます。

 ドライ濾過では半年かかるともいわれる濾過の立ち上がりですが、意外に早くろ過が効いてきました。

 この理由として考えられるのは、

  1. 底床として用いた大磯が新品ではなかったので、初めからある程度バクテリアがいた。

  2. 実験開始時に、以前の飼育水が少し混ざった。

  3. 実は、実験開始3日前くらいからドライボールを試運転していた(爆)。

などが挙げられます。

 もう一つ考えられるのは、有機物がアンモニアに分解される過程がまだうまく機能しておらず、アンモニアの供給自体が少ないかもしれないということ。
 また、ワニガメが成長旺盛で食べたものの大部分が血となり肉となり、見た目ほどは水を汚していない可能性も。

 とはいえ、濾過器を付けていない頃は1日で水がドロリと白濁し、生臭い匂いが生じました。濾過器をつけて亜硝酸濃度がピークを迎えた頃から、明らかに水の生臭さが消え透明感も増してきました
 この水・・・飲めそうです。というのはウソですけど、やはり濾過器をつけたのは正解!

ひとつの疑問

 毎日90%の水換えをして、その際、カルキ抜きをしなかったにもかかわらず、案外良い結果となっています。家の水道水のカルキが薄いのか、それともバクテリアは意外にカルキに強い(強くなった?)のか。
 とすると、人間の飲み水としての立場の水道水は、カルキ濃度をもっと上げるべきなのか、それともバクテリアを殺菌できない程度の濃度で良いのか・・・。

1999. 8.31 水量がカギ!?

 グラフに7月31日から8月31日までの水質計測結果を追加しました。この間、おもしろいような変化はありませんでした。アンモニアも亜硝酸も、低レベルで行ったり来たり。8月16日にプロテインスキマーを設置したのですが、目に見えて汚水が除去できたにもかかわらず、残念ながら水質の数値変化としては表れていません。

 なお、プロテインスキマーを設置すると同時に、アンモニアの計測を終わりとし、硝酸塩(緑の棒グラフ)の計測をスタートしました。

 濾過の立ち上がりとは、すなわち亜硝酸が検出されない事。
 しかし、このワニガメ水槽は未だ亜硝酸試薬で測れる最低レベルを記録していません。立ち上がりが遅いといわれるドライタワーですが、この意味では確かにそういう結果が出ています。なお、硝酸塩の濾過はこのシステムでは難しいので、水換えで排除するしかありません。

 さて、今回、私が重要と感じたのは、水量です。

水量がカギに!

 現在ワニガメ水槽の全体水量は約20リットルで、亜硝酸の最低濃度は0.15mg/lでした(この値はTetraの試薬の説明書きによると”まだ許容できる状態”)。

 例えば、単純に考えて、水量を2倍にすれば亜硝酸濃度は0.15÷2=0.075mg/l。この値はTetraの試薬の説明書きによると0.1mg/l以下、”理想的な水質”です。
 すなわち、現在の濾過能力そのままに、水量を2倍にするだけで「濾過が立ち上がった」と言える状態になるのです。もしも、60cm水槽の水草水槽と同じ水量だったら・・・約60リットルなので3倍の水量となり、0.15÷3=0.05mg/l。おおっ、すごいきれいじゃん!
 確かに実際にはいろいろ複雑な要素があるので、こんなに単純には言えませんが、良い方向に働くことは間違いありません。

濾材の量

 普通いわれる濾材の必要量の目安は、水槽の容量に正比例しています。例えば、60cm水槽ならこのくらい、120cm水槽ならもっと多めのこのくらい、という具合に。当然、このことは、水槽が大きければ飼育している生物も多い・大きい、という想定があるわけですが、実際のところ(特に初心者のうちは)小さい水槽なら濾材も少なくて良いというふうに誤解してしまうことが多いようです。
 現実は、かえって水槽が小さい(=水量が少ない)ほうが、濾材を充実させなければならないのですが・・・(参考)。

 念のため言うと、濾材(生物濾過用)は、濾過を行う濾過バクテリアの棲家でしかないので、量が多けば、即、濾過能力が上がるということではありません。要は濾過バクテリアの数が重要なわけです。
 さらに、ここでも誤解しがちなのですが、濾過バクテリアが多ければ多いほど、その水槽の水質が良い、というわけではありません。分解すべき水槽内の汚れが無ければ、濾過バクテリアも増殖しないので、濾過バクテリアが多いということはそれだけ水の汚れ方が著しいということに他ならないのです。
 そして、そういう水槽では何かトラブルがあっていつもより水質が悪化するともう大変。濾材には、すでにびっしりと濾過バクテリアが繁殖しており、さらなる増殖スペースが足りないため、いつも以上の水質の悪化には対応できません。

 以上のことから、理想は「十分な量の濾材と、なるべく少ない濾過バクテリア」で濾過が立ちあがっている状態ということになります。

 能力に定評のある濾材はそれなりに高価です。高価な濾材を導入し濾過設備を充実させることと、大き目の水槽に買い変え全体水量を増やすことは、水質を維持するという意味で同じような効果を持つといえます。とくに規格品の水槽なら比較的安価ですし、バカ高い濾材を買うより即効性も狙え、確実。

 そんなわけで「全体水量もけっこう重要だゾ」と、自分に言いきかせているところです。そろそろ大きい水槽の購入を考えないと・・・。

1999. 9.28 計測値に誤り発覚

 ドライタワーを設置してから2ヶ月ちょっと。
 今回の報告は、まず、水質試薬の使い方について触れなくてはいけません。なんと、今まで亜硝酸試薬の使い方を間違っていたため、正確な濃度測定ができていなかった(より濃い濃度が検出されていた)のです。ぐはあっ!!!

 これまで、亜硝酸濃度はほぼ”0.15mg/l(まだ許容できる状態)”で安定していました。ところが、正しい測り方では、さらに1ランクくらい低い濃度になります。0.15mg/lの1ランク下は”0.1mg/l以下(理想的な水質)”です。亜硝酸濃度0.1mg/l以下の状態を”ドライタワー濾過の立ちあがり”ということにすると、私の知らない間に、濾過ができあがっていたかもしれないわけです。
 もともとドライタワーがどのくらいの時間で立ち上がるのか調べるために始めたこのコーナー。知らないうちに立ち上がっていたのならショックです。

 恐る恐る正しい測り方で計測してみた所・・・まだ、0.1mg/l以下にはなっていませんでした。未だ濾過が立ち上がっていないことを、喜んでいいのか悲しんでいいのか。

 この濾過システムでは、硝酸塩濃度は水換えで排除しない限り上がり続けるわけですが、プロテインスキマーを併設することで硝酸塩の元となる汚れを排除し、濃度上昇スピードを押さえている(ハズ)。グラフからは読み取れませんが。

 さて、硝酸塩濃度を計測する意義として、濾過の立ちあがった水槽で水換え時期を知るということがありますが、この水槽ではほとんど毎日水換えを行っており、硝酸塩を測ることにあまり意義はないように思えます。
 ところが!ドライタワー濾過では、硝酸塩をも濾過できるというウワサがあるのです。念のため硝酸塩も計測を続けたいと思います。

1999.10.30 立ち上がり完了

 まずは、グラフをご覧ください。

 青い折れ線で表示してある亜硝酸塩に注目。
 9月21日に0.15mg/l(まだ許容できる状態)を記録したのを最後に、その後はずっと0.1mg/l以下(理想的な水質)を記録しました。グラフに表示してある最終日は10月5日のデータです。つまり連続約2週間も、亜硝酸濃度が最低値をマークしたのです。

 この結果を持って、ドライタワーの経ち上がり完了といえそうです。

結果:立ち上がりまでの時間、約2ヶ月

 半年くらいかかると聞いていましたが、けっこう早かったです。通常のウェット式濾過と比べても、極端に遅いということもありません。カメ水槽の濾過は、気休めにしかならないといわれますが、子ガメくらいであれば、ドライ式濾過で十分効果があるといえます。

 ところが・・・・!!(激動の最終回へ)

2000. 1.25 まとめ、そして新たなナゾ

 今回が最終報告。

 出来事メモのほうに書いたとおり、しばらく家を留守にした際に揚水トラブルがあり、なんと3日間、ドライタワーに水が流れないという事故が発生しました。ようやく立ち上がった矢先の手痛い出来事です。下のグラフで、10月9日すぎから亜硝酸濃度が上がっているのは、この事故の影響です(すぐにアンモニアの計測も再開)。

 しかし、バクテリアが完全に死滅したというわけではなかったようで、その後ほどなくして、元の立ち上がった状態に回復しました。いや〜よかった。
 ドライタワー内の空気は水の落下によって対流し、通気がなされています。水が流れなかった3日間は通気状態が悪く、そのため、濾材が完全に乾燥するまでには至らなかったのでしょう。不幸中の幸いでした(あるいは休眠状態で生き残っていたのかな?)。

まとめ

 いま一度全体を振り返ると、まずはじめにアンモニア濃度が上昇し、それを追いかける形で亜硝酸濃度の増加が認められました。まさに教科書的な結果です。こういう結果を突きつけられると、肉眼で見えないとはいえ、濾過バクテリアというものの存在を信じないわけにはいきません(もちろん実際に存在するわけですが)。

 「ドライタワーで濾過できるらしい」というウワサの硝酸塩に関しては、そういったことを示す結果を得ることはできませんでした。実際のところどうなんでしょう?

 さて、我が家のドライタワーは世間でいわれるよりずっと早い「約2ヶ月」で立ち上がるという結果になったわけですが、その原因として考えられることは、

  1. 水換え頻度が多くて(ほぼ毎日)、汚れがたまる間もなかった

  2. 当時ワニガメが成長旺盛な時期で、餌の吸収効率がよく、水をあまり汚さなかった

  3. ドライ濾過といっても、特別、立ち上がりが遅いわけではない

などがあります。

 1に関しては、バクテリアが汚れの分解をはじめるタイミングは意外に早く、水族館では、給餌の数分後にエアレーションを強化して分解を促進させるという事例もあるとおり、問題なかったと思います。それに、たまに水換えをサボったからといって、翌日、高濃度の汚れが検出されるということもありませんでした。
 そんなわけで、私は2と3の相乗効果があったのだろうと思います。

 実験の最終日、なんと再びアンモニアが検出されてしましまいた(;;)。この原因はまったくわかりません。その後は水槽の状態も良い事から、ただの計測ミスなのか、何かフクザツな要素が絡み合って水質が悪化したのか・・・。
 なんとも生物飼育というのは難しい。試薬の結果に一喜一憂するのではなく、やはり日々の観察が重要ということでしょう・・・などというあたりまえの結論付けは、ハッキリ言ってほとんど役に立たないのだが。

以上でドライ濾過の立ち上がり経過報告は終了です。

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