2006年8月
2006. 8. 7 うれしい出会い連続
2006. 8.22 第8回両生類自然史フォーラム
その1 ハコネサンショウウオ
立ちしょんに最適
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かれこれ1ヶ月以上前になりますが、林道脇の枡に向かって立ちしょんしてたら、その放物線の先にハコネサンショウウオの幼生に似た影を発見。おおっ!?
・・・ちょっと躊躇しましたが、枡の中に入って観察し見事2匹と出会いました。
ハコネサンショウウオの幼生は普通、小さな沢の”淵”に沈んだ石の下などに潜んでいます。このようなコンクリートの枡を人工の”淵”として、幼生たちがたくましく住処に利用していることが分かりました。
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その2 クロサンショウウオ
その半月後(7月中旬)、今度は別の林道沿いの沼地(標高1,300くらい)で、産み付けられて間もないクロサンショウウオの卵のう群に遭遇。メスらしき個体は見当たりませんでしたが、水中には繁殖に集まったたくさんのオスたちがうごめいていました。をー、すげー!!
卵のうはまだ小指ほどのサイズ。(水を吸ってさらに膨らむ)
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沼の底には、多数の卵のうが散らばっていました。通常、卵のうは水中から飛び出た枯れ草や、水面下に垂れ下がった枝などに産み付けられます。このうちの一部がはがれ落ち、沈んだものだと思われますが、これが産卵行動の激しさを物語るのか、他の原因(例年より産み付ける場所が少なかった・卵のう自体に異常があった等)によるのかはよく分かりません。
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立て続けに新たなサンショウウオ観察ポイントを発見するという幸運に恵まれ、サイコーにうれしかったです。思い当たることはありませんが、たぶん日ごろの行いが良かったのだと思います。
その3 ホクリクサンショウウオ
さらにラッキーな出会いは続きます。
先月末、お隣の富山県に一泊旅行してきました。目的は第8回両生類自然史フォーラム出席および富山県立自然博物園「ねいの里」見学。ここでなんと、念願のホクリクサンショウウオ幼生と遭遇できました(感涙)!!!詳細は後日レポート予定。
心地よい旅の疲れを感じながら帰路についたわけですが、ラッキーはここまででした。旅の最後で、無念にもわずか数秒差で隣町からの乗換え電車に乗り遅れてしまい、遠路タクシーで帰宅するはめに・・・(;;)。日ごろの行いが悪かったからだと思います。思い当たることたくさんあります。
年1回のお楽しみ、日本両生類研究会主催の標記フォーラムが、先月29日、富山大学五福キャンパスにおいて開催されました。
以下に、この日行われた講演の中で私が特に興味を持った内容について、記憶が新鮮なうちに書き留めておきます。
なお、すでに記憶が薄れてしまった部分(約20%)や、難しすぎて理解できなかった部分(約80%)については、憶測で補ってあります。
「新産地のホクリクサンショウウオ」中藪俊二(高岡龍谷高等学校)
某所における環境アセスメント調査において、新たなホクリクサンショウウオの繁殖池が発見されました。
このうち、上流に農業用水のため池がある繁殖池では、用水を流すと水質(pHや電気伝導度)が急変するそうです。中藪先生によると、”産卵に適した水質”というものも存在するらしく、水質が合わなければ卵を産まずに陸に上がってしまうといった事態も起こりうるのだそうです。
では、いったい、どのような水質が産卵に良いのでしょうか?逆説的に考えれば、卵から孵った幼生がもっとも成長しやすい水質こそが、卵を産むにもっとも適した水質ということになるのかも?
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ホクリクサンショウウオの♂
ちょっと分かりにくいが、クロサンショウウオと違って生殖結節を取り囲むシワがある。
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「北海道釧路湿原に分布するキタサンショウウオの生息環境評価の試み」佐藤孝則(天理大学)
これは簡単に言うと、「キタサンショウウオの住処に点数付けする」という研究です。例えば、天敵がいなければプラス5点、良い隠れ家があればプラス3点、・・・といった具合に点数(評価点)を付け、それらを集計してトータル的な”すみやすさ”を表す点数を求めます。適切な配点ができれば、生息地の予測や、保護対策で何を重要視すべきかの判断等に役に立ちます。
配点は経験とカンが頼り。はたして、サンショウウオの専門家は、評価対象及び評価点をどう決めたのでしょうか!?この研究では次表のとおりでした。
評価対象 |
評価点 |
繁
殖
地 |
自然度
周辺植生
幼生変態期の水域
幼生の天敵
幼生の餌 |
1:人間環境
1:フキ、ヨブスマソウ、ササ等
1:乾燥
0:トゲウオ類
0:なし |
3:半自然環境
3:ヨシ、ホザキシモツケ等
3:湿地
3:ヤゴゲンゴロウモドキ等
3:相対的に少ない |
5:自然環境
5:ヨシ、谷地坊主、ハンノキ類
5:湿潤または滞水
5:未確認
5:相対的に多い |
越
冬
地 |
地表の温度変化
土中の温度変化
土質
産卵地間距離
日当たり |
1:相対的に大きい
1:相対的に大きい
1:湿地土壌、湿潤腐食土壌
1:20m≧
1:不良 |
2:半乾燥土壌、木の根元等
2:20m>≧10
2:やや良好 |
3:相対的に小さい
3:相対的に小さい
3:乾燥土壌、砂、玉砂利等
3:10m>≧0
3:良好 |
採
餌
場
所 |
地表の湿度変化
地表の温度変化
土質
産卵地間距離 |
1:相対的に低い
1:相対的に大きい
1:乾燥土壌、砂、玉砂利等
1:20m≧ |
2:20m>≧10m |
3:相対的に高い
3:相対的に小さい
3:湿地土壌、湿潤腐食土壌
3:10m>≧0 |
避
難
場
所 |
地表の湿度変化
地表の温度変化
樹木の被覆度 |
1:相対的に低い
1:相対的に大きい
1:0≦<50% |
2:50≦<80% |
3:相対的に高い
3:相対的に小さい
3:80%≦ |
この表に従いいくつかの生息地を評価したところ、実際にはキタサンショウウオが多く生息しているのに点数が低く出たり、その逆の場合もあったそうです。今後検討を重ね、いっそうの精度向上が図られれば飼育の参考になります。
キタサンショウウオ成体の食性。
逆にキタサンショウウオは、タンチョウやアオサギに食べられているそうです。
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調査トラップにかかったキタサンショウウオと不運なトガリネズミ(涙)。
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「両生類味蕾におけるガストデューシンと上皮性ナトリウムチャネル(ENaC)の発現と局在」熊倉雅彦(日本歯大)
両生類にも味覚があります。このうち、”苦味”を感じる味細胞にはガストデューシンという蛋白質が、”塩味”を感じる味細胞には上皮性ナトリウムチャネルという蛋白質分子が、それぞれ関与しているのだそうです(このほかに甘味、酸味も感じることができるらしい)。
味覚には、”毒”を見分ける役目があります。サンショウウオも、異常な味がするものはたちまち吐き出して、体に毒を入れないようにしています。ところが、ご存知のとおりサンショウウオは水分を皮膚から吸収しています。と・い・う・こ・と・は、毒を取り込まないためには口だけでなく皮膚にも味覚(またはそれに類する感覚)が必要!・・・そういえば、確かに、サンショウウオは皮膚でも味を感じているふしがあります(→口元にミールワームの内臓をつけると食欲が増進する)。
実際のところ、両生類は、味のみならず、全身で周りの環境(例えば前述の産卵に適した水質など)を感じとっているのかもしれないそうです。おもしろい研究テーマになります。
「韓国英陽郡の体験修練場付近の朝鮮山椒魚について」長谷川巌(福井県両生類研究会)
朝鮮山椒魚を現地で観察したレポートです。日本のサンショウウオとはかなり異なった環境に生息していることが意外でした。
下の写真は、普段あまり見ることのない口の中の様子です。V字型の鋤口蓋歯列が良く見えます。
チョウセンサンショウウオの口の中
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「クロサンショウウオの腎臓と外鰓におけるイオン輸送体局在の個体発生にともなう変遷」熊野智子(富山大学)
腎臓には、体内の余分な水分等をおしっこにして体の外に出し、浸透圧や血液のpHバランスを保つという大切な機能があります。この研究は、幼生の外鰓にも、腎臓同様にこれらの調節機能があることを突き止めた研究です。
こちらでちょっと触れていますが、サンショウウオの腎機能は、幼生のうちは前腎が担っています。やがて前腎は消失し、かわって発達してくる中腎が機能を引き継ぎます。(ちなみに人間の場合はもう一段階あって後腎が形成される。これがいわゆる腎臓。)
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サンショウウオ幼生の飼育においてよく問題となる”むくみ”は、前腎の機能障害がひとつの原因。そのような体の不調に対して、前腎の機能を補うかたちで外鰓の機能が増進することはあるのだろうか?外鰓を大きく発達させるような飼育方法(酸素濃度をあまり高めない)は”むくみ”対策に効果があるのだろうか?など、飼育レベルでの興味が沸きました。
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このほかにも、遺伝子解析でアズマヒキガエルとナガレタゴガエルの雑種を確かめた研究やウシガエルの変態の仕組みに関する研究など、たくさんの面白いお話を聞くことができ、今回もまたすばらしく有意義なフォーラムでした!
フォーラム終了後は富山城近くの飲み屋街へ向かい、つい飲みすぎて3軒ハシゴしてしまいました。フォーラムより有意義でした。温泉付きビジネスホテルでゆっくりすごした翌日は、念願のホクリクサンショウウオ幼生と対面を果たした富山県立自然博物園「ねいの里」見学へとコマが進みます。
メモ
- 6月24日
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水換えした。ちびくろ♂がずっと水中生活を続けてる。なぜなんだ!?
- 6月26日
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活きミミズを給餌。全員食べた。
pH安定、ミネラル補給目的で、カルシウム錠剤2錠を水中に放り込んだ。
- 6月30日
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レプトミン(with カルシウム+液状ビタミン)給餌。全員食べた。
- 7月5日
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乾燥ミミズ給餌。ビタミン補給のため飼育水に液状ビタミン剤をちょっとたらした。
ちなみに、ナゾの植物はすでに枯死し、カビはものの数日でなくなった。水槽内に再び静寂が訪れた・・・。
- 7月10日
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ミールワーム(カルシウムを丸1日ローディングしたもの)を給餌。太りすぎ傾向のため、1匹ずつしか与えなかった。かなり物足りなさそう・・・。
- 7月16日
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レプトミン(with カルシウム+液状ビタミン)給餌。
ちびくろ♂が上陸してた!
- 7月23日
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ブドウムシ(with カルシウム)給餌。1匹ずつ完食。
ちびくろ♂がまた水の中に・・・。
- 7月31日
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ブドウムシ(with カルシウム)を1匹ずつ完食。それにしても、刃こぼれ♂がくわえ下手。やはり舌に何らかの異常があるのだろう。口をあけて観察したところで治療もできないし・・・。う〜ん。
- 8月8日
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ブドウムシ(with ビタミン)給餌。刃こぼれに与えるブドウムシが足りなかった。スマン( ̄▽ ̄;。
- 8月15日
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レプトミンを1匹に2個ずつ給餌。水面に何やらホコリのようなものがたくさん浮いていることに気が付いた。・・・ホコリじゃなくてトビムシの大群だ!!!うっぎゃああ!!!
マクロ撮影してみたら、意外とかわいい顔してた(爆)。
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大発生したトビムシ
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- 8月16日
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新兵器を駆使してトビムシを一網打尽にした(さらば・・・)。ついでに床材もかき混ぜて、久しぶりの大掃除を行った。
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