生活史

 クロサンショウウオが、どのような生活を送っているのか紹介します。

水中生活から陸上生活へ

 同じ両生類であるカエル同様に、クロサンショウウオは幼生時代を水中で過ごし、成長すると上陸して、森林・雑木林の倒木の下や土の中などで生活するようになります。
 群れを作ることはせず単独で隠れ棲んでいますが、条件の良い隠れ家には、その狭い内部に複数が潜んでいることもあるようです。

 よく、サンショウウオはきれいな清流にしか棲んでいないと誤解している人がいますが、実際には陸上で生活している種類が多く、成体が水の中に入るのは産卵の時だけなのが普通です。決して、「サンショウウオ」=「清流の生き物」ではありません

 具体的な成体の生息場所として、私のサンショウウオの師匠山椒大夫さんから教えてもらった内容をご紹介します。

  • 下面が平らな石や倒木、立ち枯れ木などが周囲に存在する空間。

  • 産卵場所から意外と近くにいる。

  • 地中20〜30p程度潜っていることが多い。

  • 丘陵地の斜面にめり込んだ石を掘り出すと出てくることが多い。

  • ある程度日陰になりつつも、木漏れ日くらいは当たる場所。

  • 水はけは、意外と良い場所。

  • 木の根切り株等では、いたとしてもぶち壊すくらいの荒技が必要なので、簡単に崩せるものに限定して探すのがよい。

  • 例外的に、頂上部の火口湖などでは火山弾の隙間に隠れていて簡単に見つけられることがある。

 山に土地を持っている方で、付近でクロサンショウウオの卵のうを見かけたことのある方にお願いします。まわりに上記のような環境がある場合は、どうか手を付けずに、そっとしておいてあげてください。姿を見たことがなくとも、そこにはクロサンショウウオたちが密やかに息づいているのですから・・・。

産卵

 産卵場所は種類によって異なり、川のような流れのある場所に卵を産むものと、池や沼のような止水(たまり水)に産むものとがあります。「サンショウウオ」=「清流の生き物」というイメージは、ここでも誤りということです。

 クロサンショウウオは後者のタイプで、2〜5月頃、止水にいっせいに集まって産卵します。


クロサンショウウオの繁殖池

 メスは1対2房の卵のう(片房30〜40個の卵が含まれる)を水中の小枝などに産み付けます。
 この際、オスはメスに抱きついて引き抜くようにする助産行動をとります。これは、クロサンショウウオは体外受精のため、メスが産んだ卵のうにいち早く自分の精子をかけるためだと考えられています。
 ちなみに、ほとんどの有尾類は体内受精であるのに対して、なぜか日本のサンショウウオはすべてが体外受精という珍しい特徴を持っています。


クロサンショウウオの卵のう

 クロサンショウウオの卵のうはアケビ状で、サンショウウオの卵の中では唯一白濁しており、他種のものと容易に区別できます。


水田に産まれたクロサンショウウオの卵のう群

 卵のうについて、こちらで詳しく解説してますのでご覧ください。 ⇒ 「サンショウウオのたまご
 サンショウウオの卵のうは種類ごとに特徴があるため、同定(種類を見分ける)の目安になります。

孵化

 産み付けられた卵のうから、数週間で幼生が孵化します。
 孵化に要する日数は水温が高いほど短くなり、およそ次の式が成り立つそうです。

産卵から孵化までの日数=−5×平均水温+79

幼生から成体へ


幼生の生育環境(繁殖池の水中写真)

 生まれてくる幼生は、外鰓がいさいと呼ばれるふさふさしたエラのあるかわいらしい姿をしています。
 10日もすれば前足が生え始め、さらに1週間ほどすると後足も生えてきます。

 孵化から2ヶ月ほど経つと、外鰓が徐々に小さくなり、変態の時期をむかえます。(変態とは、オタマジャクシからカエルになるように、幼生が成体の姿に変化すること。)
 ここまでの生存率は周辺環境等によって大きく異なりますが、ある報告では2%以下と推定しています。

 一般に、変態したばかりの個体を幼体と呼び、成長に従って、幼体→亜成体→成体と呼び分けます。

呼び名
(年齢の目安)
解   説
幼体
(0〜2歳)
変態後の未成熟の段階で、亜成体以前のもの。
亜成体
(3〜4歳)
厳密な定義はないが、成体になる直前の段階を指して用いられる。
成体
(5歳〜)
成長して繁殖活動を行えるようになった段階。

 1つの卵細胞がどのように成長して大人のサンショウウオになるのか、アニメーションで紹介していますのでご覧ください。 ⇒ 「サンショウウオの発生段階アニメ

冬眠と夏眠

 冬と夏には、あまり餌を摂らずに土中にもぐりこんで冬眠や夏眠をすることが知られています。

寿命

 15年程度以上(せいぜい20年程度?)は生きことができると考えられていますが、あまりよく分かっていません(一説には40年以上とも)。
 野生下では、ベビやイタチ・タヌキ・鳥などの天敵に襲われる危険が多いため、平均的にはその半分以下で死んでしまうことが多いようです。

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