2004年3月

2004. 3. 1 夢にまで見た繁殖期のオス
2004. 3.11 懺悔−脱走を許してしまいました
2004. 3.15 毎年恒例、故郷の繁殖池レポート

2004. 3.1 夢にまで見た繁殖期のオス

 きのう日曜日は、朝から雨が降り続く絶好のクロサンショウウオ産卵日和。今年こそは繁殖行動を観察したいと考えていた私は「この期を逃すまじ!」と、近くの繁殖池に足を伸ばしたのでしたが・・・。

この期を逃した

 ─ 時すでに遅し。

 たどり着いた繁殖池には、すでに多数の卵のうが鈴なり状態。いったい、いつ頃、産卵が行われたのだろう?

 産まれたて卵のうは、水を吸って日ごとに膨らんでいきます。初日には大豆ほどしかない白い部分の幅は、2週間程度で飽和し最大サイズに達するそうです。そこで、この白い部分の幅を調べ、例年のデータと比較することで大体の産卵日を割り出すことができるのです、が、あいにく私は肝心のデータを持ってない・・・。

 しかし、そのシルクにも似た純白の輝きが、産み出されてからそれほど時間が経っていないことを物語っています(時間が経つと藻類が入ったりして汚れてくる)。

 のんびりした成体(オス)が、まだ池の中に残っている可能性は相当に高いとみた!目的は、成体探しに変更です。

 


この美しさ・・・。

意外に貴重な写真かもしれない、水中からみた卵のう群。

ならばと成体探し

 実は、こんなこともあろうかとちゃんと網を用意していました。
 卵のうを傷つけることのないよう、離れた場所の枯れ枝や落ち葉の下をひたすら探ること数十分。何度繰り返しても、捕れるのは巨大ミズムシばかり(1.5cmオーバー!これはこれで興味深かったが)。
 越冬幼生の1匹でも見つかれば大収穫なのに・・・。さすがに飽きてきた頃、

 なんか捕れた。

 ・・・キ、

 ・・・キ、

キタ─(゚∀゚)─!!(お約束ということで。)


 全長約18cm、肥大した首の付け根の幅約2cm、側偏した尾の幅約1cm。文句のつけようがないリッパなオスです!!!うわ〜ん!(爆涙)

※最終的に、2匹のオスを見つけることができました。

観察は驚きの連続


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 異形ともいうべきその体型。繁殖期特有の変化について基礎知識がなかったら、クロサンショウウオだとは分からなかったはずです。


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 今回の観察で最も大きな衝撃を受けたのは、このブヨブヨに水を含んだ体の質感でした。これほどとは予想もしなかった。


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 そして、やっぱり気になる生殖結節。いったい何の役に立つ器官なのでしょうか?すばやく受精させるため、卵のうを探り当てる触覚のような役割をしたりするのかも???

もっと知りたい!

 産卵期を迎える地域は徐々に標高の高い方へと移っていくので、今後、他の繁殖地を見学に行く時期の目処が立ったことも、この日の収穫のひとつです。当たりをつけて、また別の池に見学に行こうと思います。お腹がパンパンにはったメスも見てみたい!オス同士の小競り合いも見たいし、メスを呼ぶ波立て行動も見てみたい!クロサンショウウオのことをもっともっとよく知りたい!

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 夢にまで見た繁殖期のオスに出会えたこの日 ─ 2月29日は、私にとって特別な1日になりました。自分だけの記念日に認定して毎年お祝いすることに決めたのですが、次にくるのは4年も先の閏年です(^^;。(でもきっと忘れてない。)

2004. 3.11 懺悔−脱走を許してしまいました

 先日、飼育部屋のドアを開けた際に、水槽真下に並べてあったペットボトル(水道水の汲置用)の隙間にサンショウウオの姿を発見。脱走から間もなかったようで、体表の乾きはなく、また、水槽のふちから1m近く落下したであろうにもかかわらず、見たところ特に内出血などの怪我もなし。運良く無事保護できました。

 過去の失敗の反省から、折に触れて万全の脱走対策を呼びかけていたくせに、自ら脱走を許してしまうとは・・・。

脱走経路

 実をいうと、脱走経路には心当たりがあったりします。

 何度かのジョウロ散水の折に、フタ(ベニヤ板使用)に水滴がかかり、徐々に”反り”が出てきていたことに気が付いていました。しかも、水槽すぐ横の窓を開けているせいで、降水時の湿気が”反り”を助長していたことにも気が付いていました。結果的に、一昨日の時点でフタと水槽との間には5ミリ以上の隙間が出来ていたのです(しかも少しの力で押し上げることができた)。

 飼育も今年7年目ということで、飼育環境に馴染だせいかガラス面を上ろうとする個体はめったに観察できなくなっており、完全に油断していました。この日、もしも私が飼育部屋を訪れるのがもう少し遅れていたなら、無事発見できたかどうかは分かりません。ふ〜。本当に”ウン”が良かった・・・

 さて、ただちに以下のとおり脱走経路をふさぎました。


フタを開けた状態。
奥の”固定フタ”の部分が反り返り、隙間が出来ていた。
見栄えは悪いが、ガムテープで周囲をぐるっと水槽に貼り付けて完全に固定。
ガムテープが劣化してきたら貼り替える必要がある。

手前の”可動フタ”には、反りは見られない。
特にオモリを乗せたりはしていないが、フタ自体にある程度の重さがあり、またサイズ的にキッチリはめ込むように作ってある。
張ってあるメッシュはステンレス製で3ミリ四方。

濾過器のパイプやpH計等のラインは、ベニヤ板に径ピッタリの穴を開けて通している。

ファンは稼動させていないことも多いが、裏側には園芸用メッシュが張ってあり、ここからも脱走はできない。

 なんというか、あまりに脱走を防ぐことに神経質になりすぎて(そのくらいが丁度良いのだが)「サンショウウオを閉じ込めている悪人」になった気分です。いや、サンショウウオからしてみれば、まったくそのとおりなのですが・・・。

飼育メモ

3月1日

 それにしても、昨日出会った野生のオスの印象はキョーレツだった・・・。あのオスを見たとき、正直、今年の我が家での水槽内繁殖の失敗を確信した(爆)。足りない!足りない!飼育条件に何かが足りない!(そして、それが何なのか見当が付かない・・・泣。)

3月4日

朝から大雪デス。

3月5日

 今日も雪。水温7℃で、さすがに冷えひえ。水中にはいつもより多めの7匹が留まっていたので、やはり温度と相関があるようだ。観察を兼ねてミールワームを給餌したが、2匹だけが食べた。

 あと、サンボのシッポを撮影しました(右写真)。


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3月6日

 ふと思ったが、自分は「あくまでも人工的な環境における理想的な飼育」というものにこだわりすぎているのではなかろうか。そのため、足りないものを足してゆくという発想に凝り固まっているきらいがある。発想を変えれば、まずは出来る限り自然に近い状態で飼育する事からはじめ、そこから「真に重要なものを削りだしていく」というアプローチも当然あるはずだ。この件については、今後深く考える必要がある。

3月9日

 朝、雨が降っていたので、ジョウロで足し水した(蒸発分だけ)。夜、脱走を発見。なさけない。フタをさらに厳重にした。

3月10日

 雪が消えたと思ったら、急に暖かくなってきた。こりゃもう完全に春だな。水温は13℃にまで上昇。たまには珍しい餌をと、お刺身のシラウオを与えてみたが、1個体しか食べなかった。

3月11日

水温12℃。水中に4個体。

2004. 3.15 毎年恒例、故郷の繁殖池レポート

 我が家のクロサンショウウオたちの故郷の繁殖池は、道路拡幅工事のために潰されていた。


2004/3/13

 書きたいことを一生懸命まとめてみたが、この気持ちを全部伝えることは無理だとわかり、文章にすることは諦めた。
 大の男だって、涙は出る。


排水のため畔をえぐりとられた。

在りし日の繁殖池。

(追記:その後、里地の農業に関係する仕事を経験し、このようなため池が中山間地の農業にとってなくてはならない存在であることを知りました。きっと、道路工事が終わったあとには、このため池も復旧されるはずです。この場所でまたサンショウウオの幼生たちと出会う日が楽しみです。)

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