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2006年2月

2006. 2. 7 給餌の極意を模索する(その1)
2006. 2.12 給餌の極意を模索する(その2)
2006. 2.16 繁殖期がやってきた
2006. 2.25 給餌の極意を模索する(その3)

2006. 2. 7 給餌の極意を模索する(その1)

 相変わらず、ちびくろ(♂)の食欲が旺盛すぎる。餌をねだってくるのは元気な証拠だと思いますが、食欲に任せて食べさせることが健康に良いとは思えません。

 んで、より適切な給餌を検討するため、昨年末から「土壌動物のバイオマスの季節変動」についてちょびちょびと調べてきたわけですが、この辺で中間報告しときます。
 これまでに見つけて参考になった文献は次のとおり。

  • 中村好男・藤川徳子・山内克典・田村弘忠(1970)北海道の天然林と人工林における土壌動物相
  • 遠藤文枝(1971)野幌におけるヒメミミズ類個体数の季節変動
  • 竹内将俊・西村香奈子・田中愛・内山美穂・大石,英子・横山能史(2004)房総半島におけるトウキョウサンショウウオ成体の餌資源および産卵環境の現況

土壌動物の個体数の季節変動

 下は、上記文献の北海道の天然林の土壌動物データの中から、サンショウウオ成体が好んで食べていると思われる種類を抜き出し、季節ごとの個体数の移り変わりをグラフにしたものです(1m2当りA層以上)。

 どの種類も秋に最も多いことが分かります。そして、夏に最も少ないです(ヤスデ類を除く)。房総半島での調査でも夏季にワラジムシ目の減少が確認されており、ヒメミミズのデータでも8月と10月に少なくなっています。
 これまで私は、土壌動物は高温多湿な夏場にこそ最も数を増やすイメージを持っていたので、とても意外でした。

 春から夏にかけての減少はいまいち釈然としませんが、秋にドンと増えるのは、きっと落ち葉が増えるからです。土壌動物の多くは落葉落枝などを食べる分解者ですから、進化の歴史の中で、食べ物の多い季節に個体数が多くなるようなライフサイクルが確立されたのだろうと思います。そして、それら分解者の個体数が多くなる秋は、それを狙う肉食の土壌動物にとっても個体数が多くなってしかるべき季節でしょう。

季節ごとの給餌頻度の手がかり

 さて、先のグラフより、季節ごとの土壌動物の生息密度はおおよそ「春:夏:秋:冬=1:1:2:1」と分かります。この比例関係に、サンショウウオが待ち伏せ型の捕食者であることを考慮して土壌動物の行動量係数(活発に行動する季節ほど値が大きい)を乗じることで、捕食チャンス(獲物との遭遇確率)の季節変動が割り出せます。これを手がかりに、季節ごとのより適切な給餌頻度を定めようという考えです。

 サンショウウオが捕食する土壌動物はすべて外温動物なので、その行動量は地温の関数である程度表せるかもしれません(もしそうなら水槽内の水温を代入しての検討もできる)。まずは、その辺に関する文献をあたっていきたいと思います。

2006. 2.12 給餌の極意を模索する(その2)

 というわけで、餌となる土壌動物の行動量と地温との関係について調べているところですが、その第一歩が下のグラフ。
 これは京大演習林(混交天然林)における大型土壌動物の調査結果で、種類ごとの個体数と生物量の占める割合を表しています。調査時期は4月下旬。

 生物量はミミズがぶっちぎりトップで、全体の74%を占めています。したがって、ミミズの行動量と地温との関係さえ調べれば、全体の傾向を7割以上の精度で推定できるということになります!と、いうのは詭弁ですが(笑)、餌として重要なのは個体数よりも生物量の大小なので、ミミズで代表させるのは妥当だろうとの判断です。いちおう下記文献以外にも何冊かの専門書(小学校低学年向け「みみずのかいかた」など)をあたりましたが、たいていの森林土壌では(程度に差はあるが)ミミズの生物量が多い傾向があるみたいです(ただし、森林より草地のほうがさらに多いという)。

  • 渡辺弘之(1968)大型土壌動物の垂直的分布について

 次回、「その3」では本題に入ります。ミミズは人気者なのですぐに調べがつくと思いきや、意外とてこずってます・・・。

2006. 2.15 繁殖期がやってきた

 豪雪だったこの冬もぼとぼち終わりそうです。雪解けが進み、背の高さを超えてそそり立っていた道路脇の雪の壁もずいぶんと低くなりました。そんなこんなで、今年も繁殖シーズン到来。
 今年度の繁殖計画はこうでした。

  1. 陸地に越冬スポット(ミズゴケの山)を設ける。→ 設けました!\(゚∀゚)/

  2. サンショウウオがそこに潜って越冬する。→ しない。

  3. 繁殖シーズンがきたら水槽内に”雨”を降らせる。→ 今ここ。

  4. 雨が引き金になってサンショウウオがミズゴケから這い出て水に入る。

  5. そして産卵。ぷりぷりっ!

 すでに報告のとおり、出だしの越冬スポットの試みからして不成功。半数以上の個体がはなから水に入って越冬するしまつ。(ノ∀`)アチャー

降雨の表現方法

 もはや意義は薄いですが、せっかくだし、計画はこのまま続行することに。

 ”雨”を降らせるため、水場に設けてあったシャワーパイプを外し、右写真のとおり陸地のほうへ廻しました。シャワーパイプのホースを長くとっておいたのはこのためです。
 配管部にはポンプからの水を分岐させるコックを設けてあるので、このコックの開け閉めにより、好きなときにシャワーパイプから水を出すことができます。
(参考:飼育設備の実例


シャワーパイプから水を出して”雨”を表現!
雨というより小便小僧の連れションです。

 今後しばらく、実際の雨天の日にあわせて水槽内にも”雨”を降らせてみます。

メモ

 昨日、陸地には3匹[デ(♂)、刃(♂)、お(♀)]。アカミミズを給餌し、水中の2匹が食べた[ch(♀)、ち(♂)]。水温は9℃。ちなみに1月29日はビックリ3℃だった(今シーズンの最低水温)。

2006. 2.25 給餌の極意を模索する(その3)

 その1において、秋に土壌動物の個体数が増えるのは”餌となる落ち葉などが増えるから”(注:常緑樹でも秋に多く落葉する)だと考えましたが、春から夏にかけての個体数の減少も、同様の視点で説明できることに気がつきました。
 夏は青々と緑が茂る季節です。土の中の養分は植物に取り込まれ、葉っぱや枝に姿を変えて地上のほうに集められちゃうわけです!トーゼン、土の中はしだいに餌不足に。なるほど、土壌動物が少なくなることもうなづける。


森林生態系の物質循環

ミミズの行動量と地温

 さて本題。その2において、餌となる土壌動物のふるまいをモデル化するためミミズの行動量と地温との関係をみることにしました。はじめに調べたのはミミズの呼吸量に関する研究報告。温度が高くなると呼吸量が増えることが分かりましたが、呼吸量が増えると行動量も増えるかどうかは、よく分かりませんでした。そこで、次に目をつけたのがミミズの”糞塊”です。
 ある種のミミズは、飲み込んだ土を小さな粒状の糞にして、地面に盛り上げるように排出します。糞塊が増える理由はいろいろ考えられますが、糞塊が多いことは、間違いなくミミズが地中を移動している証拠になります。いろいろ調べたところ、渡辺弘之著「土壌動物の世界」に、「クソミミズの糞塊排出量の季節変化」のグラフを発見!
 そのグラフに、調査地付近の平均気温を重ねて表示すると、次のようになります。


糞塊排出量の季節変化

 棒グラフのとおり、糞塊が最も多くなるのは初夏の6月です。一方、気温(折れ線グラフ)は8月に最も高くなり、一見、ミミズの行動量と温度とにズレがあるように見えます。しかし!日光をさえぎる木の葉や草がまだ少ない初夏は、むき出しの地面が直射日光で温められるので、気温よりも地温が高くなる季節なのです。
 地温を推定してえいやと分析すれば、なんかそれっぽい結果が得られそうな感じ。

今後の課題

 無茶を承知で強引なモデル化を進めているわけですが、あまりに強引な部分が多く、このまま突き進んで結論を得てもサンショウウオ飼育の参考にしたいと思わなくなってきました(爆)。もう一度考え方を整理しよう・・・。( ̄▽ ̄;)

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