2002年4月

2002. 4.14 卵のう
2002. 4.15 熱帯魚水槽のインフゾリアを餌に
2002. 4.16 本格的な孵化スタート
2002. 4.19 時間差孵化のヒミツ
2002. 4.23 給餌開始
2002. 4.29 アレが生えた

2002. 4.14 卵のう

 今年は暖冬だったので、クロサンショウウオの産卵も早い時期に行われるだろうと予想しました。なかなか都合がつかなかったのですが、この度ようやく観察に行ってきたので報告します。

 ちなみに、サンショウウオ観察に必要なグッズは次のとおりです。

グッズ備考
水温計水温・気温は、太陽光が直接あたらない日陰で測る。
pH計試験紙かデジタル表示のものが便利。
メジャー写真を撮る時に一緒に写すと、被写体の大きさがわかって良い。
デジカメ百聞は一見にしかず。ぜひ用意したいアイテムである。画素数よりも接写性能で選ぶこと!
ちなみに、私が生き物の撮影に使っているのはCASIOのQV-2300UX。これは安価な機種だが1cmまでの接写ができる。
筆記用具計測の結果などを記録するのに必須。私はメモ帳の変わりに携帯電話のメモ機能を使ってます。超便利。
移植小手サンショウウオを探す時、ちょっと林床を掘りたくなることがある。
服装地味な作業着だと怪しまれにくい。
その他透明なプラケースがあると、幼生などをすくって横から観察できるので便利。

 デジカメは電池切れがないように十分に確認することが重要。今日は、途中コンビニに寄って新しい電池を買い、準備万端です!

小千谷市の繁殖池に到着

 高速を飛ばすこと1時間。クロサンショウウオの繁殖池に到着しました。予想通りすでに産卵は終わっており、卵のうがありました。
 この池は私の土地ではないですし、もしも持ち主の方が錦鯉でも飼い始めたら(この池のある小千谷市は錦鯉の大産地です)、あっというまにクロサンショウウオは全部食べられてしまうでしょう。でも、今年もこの池は無事でした。うれしいよー!!!
(可能であれば、この池を買い取ることも考えています。マジで。)

 早速、写真を撮ろうとデジカメのスイッチを入れたのですが、「メモリーカードが入っていません

 ぬおーーーー!なんてドジなんだ。しかもカードを忘れたのは今回が初めてではないんですよね・・・。

 やむをえない。ここ小千谷市は以前住み慣れた町。電気屋がどこにあるかもわかっています。・・・というわけで、余計な出費が痛かったですが、なんとか写真を撮ることができました。

繁殖池の様子

気温・・・17.5℃

水温・・・11℃(水深10cm地点)

地温・・・9℃(地中10cm地点)

pH・・・6.9と7.0の間を行ったり来たり(わずかに酸性〜中性)

 今回は、水温より地温のほうが低かったことがこれまでとは違いました。ともかく、今日の私のアパートの室温が20℃を超えているという現状は、クロサンショウウオ達の健康にとって、実に好ましくないと改めて感じました・・・。

卵のうの数について

 卵のうの数は例年よりちょっと少ない印象を受けました。目に見える数を数えると100房くらい。影に隠れている数が同数くらいあると考えても200房程度しかありません。
 1度に2房生みますから、この繁殖池ではおよそ100匹のメスが産卵したことになります。たった100匹!?この先、この地区の個体群は生き残ることができるのでしょうか!?

 池の中をのぞくと、ちょろちょろ泳ぐ生き物がたくさんいました。よーく見るとそれは1mmくらいのヤゴ。この先きっと、小さいヤゴはサンショウウオ幼生の餌になり、サンショウウオ幼生は大きいヤゴの餌になるのでしょう。
 200房の卵のうから6000匹の幼生が生まれるとしても(1房30匹で)、そのほとんどはこの池に戻ってくることができないわけです。ヤゴに食べられたり、共食いをしたり、ごくまれには人間につかまったり・・・。

卵のうのやわらかさ

 私はこれまでクロサンショウウオの卵のうはずいぶん見てきましたが、実は1度も触ったことがありませんでした。デリケートな卵のうに触るのはマナー違反です。しかし、今日、岸すれすれの浅瀬に1房の卵のうを見つけました。何かの拍子に産み付けられた場所からちぎれて、風にでも流されたのでしょうか!?かなり表面がぼろぼろになっていましたが、中の幼生はかろうじて生きていました。これを思わず触ってしまいました!

 やわらかい。想像以上のやわらかさ。生卵の白身に近いやわらかさでした。完全に水から持ち上げたら、指の隙間からこぼれ落ちてしまいそう。

 せっかくの機会なので、これを観察用に持ち帰ることにしました。

育てます

 本来は水槽内繁殖のチャレンジがこのコーナーの趣旨ですが、今年は勉強もかねて、この卵のうを育ててみることにします。無事に上陸するまで育てあげ、山に帰すことができるでしょうか。

 持ち帰った卵のうは、直射日光の当たる浅瀬にあって比較的水温が高かったため、かなり発生が進んでいました。しかし、両生類の卵は日光に含まれる紫外線に非常に弱いといわれています。水は紫外線を通しにくいのですが、水面すれすれにあったこの卵はかなりの悪影響を受けている可能性も。・・・とにかく、これまでに得た知識を総動員させて、やれるだけやってみたいと思います。

飼育設備について

 基本的な事項については幼生の飼育設備で解説していますので、ご覧になってみてください。

 今回は卵のう1房ということで、30cmの小型水槽を用いました。ヘッドを水面に出したスポンジろ過で、ごく軽く水をまわしています。
 現地の水温が11℃だったことを考えると、せめてこのアパートで一番涼しい場所に置きたい。検討の結果、トイレに決まりました。窓開けっ放し、換気扇つけっぱなしで、ただいまの水温15℃。幼生はかなり高水温に耐えるので、これなら大丈夫とは思うのですが・・・。




クリックすると詳細をごらんいただけます。

14日の深夜・・・

 大変だ、早くも1匹出ちゃったよー!ちょろちょろと泳いでいる。移動させたことが刺激になって、卵膜が破けて飛び出してしまったみたいです。人間でいう早産。どうしよう!!!


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 はっきり言ってやばいよー。ちゃんと飼えるのでしょうか!?HPの記事を読み直して気が付いたけど、自分で「幼生の飼育は簡単」みたいなこと書いてるじゃねーかよー(;;)。ホントかよっ!あーもう(苦笑)。

 餌にも困ってしまった。初期飼料として現地の泥を少しすくってくるべきだった・・・。今は、卵のうと一緒に持って帰った現地の水、その中の微生物が頼みの綱です。

2002. 4.15 熱帯魚水槽のインフゾリアを餌に

 無事に生きていた!他にはまだ1匹も孵化していない所を見ると、やっぱり昨日の孵化はアクシデントだったと思います。
 急遽、初期飼料としてインフゾリアの培養をスタート。
 水の中のいろいろな微生物を総称してインフゾリアと呼びます。繁殖池の泥が初期飼料に良いのも、泥の中にインフゾリアがたくさんいるから。これを人工的に培養するには、カップに水槽の水を汲み、野菜の切れ端などを入れて日の当たるところに置いておくと良いそうです(これを”インフゾリアを湧かす”という)。今回は小松菜の切れ端を入れておきました。こんなもんで大丈夫なのかな?では、いってきま〜す!

 帰宅して水槽を見ると、水温は19℃にまで上がっており、さらに2匹が孵化していました。う〜む。

 体力のない幼生を無事に育てるには、餌をたくさん食べさせて、一気に体力を付けさせるのがセオリーです。しかし、インフゾリアをうまく湧かせる自信がありません。仕事をしながらそんなことばかり考えていたわけですが、おかげで名案が浮かびました!我が家でもっとも水質の良い熱帯魚水槽の外部濾過器の中に、たっぷり微生物が湧いた泥(バクテリアのコロニー)があるではありませんか!これが良い餌になるに違いない!!!

 外部濾過器の中の泥は、アクアリウムひと工夫で紹介したおそうじ方法で手軽に取り出すことができました。こげ茶色をした見事なバクテリア水です!顕微鏡で見れば、インフゾリアがうようよ見えるはず。少し放置して濁りをしずめてから上澄みを捨て、底に残った泥を幼生水槽に注ぎました。

2002. 4.16 本格的な孵化スタート

 朝見ると、全部で4匹になっていた。で、帰宅すると15匹になっていた
 水温はさらに上がって20℃。水温の上昇で発生が早まり、いよいよ本格的な孵化が始まった!

 今のところ、死亡数は0。全長は皆1.2mmくらいで、まだ腹部に残っている卵黄で育っている段階でしょうか。しかし、順調に行けば、すぐにインフゾリアを食べ始め、やがて共食いが始まるのも時間の問題である!このまま1つの水槽で育てる(共食いを許す)べきか、それとも1匹ずつに分けて飼うべきか、迷っています。皆さんだったらどうしますか?


全体的に色が濃くなり、目も黒くなってきた

 幼生の写真は、底の浅いガラスの容器(シャーレなど)に幼生を入れ、5mmメッシュ程の格子線を描いた紙の上に載せて撮ったほうが、サイズがわかりやすくてよいので、早めに改善したいです。
 なお、幼生を撮影用の容器に移す際は、けっして網などですくうのではなく、大き目のスポイトの先端を大胆にカットして、直径1cmくらいの吸い込み口に改造し、それでやさしく吸い込んで移します。

2002. 4.19 時間差孵化のヒミツ

 全部で17匹に。孵化ラッシュは終わったようですが、未だ卵のうの中には孵化していない幼生が見うけられます。別の卵のうは言うに及ばず、同じ卵のう内でも、このように発生速度に差があると体の大きさに差が出ますから、早く生まれた幼生は遅く生まれた幼生を食べてしまいます。逆にいえば、食う側と食われる側があらかじめ決まっているから、あえて時間差で孵化するようになっているとも考えられます(関連記事・・・サンショウウオを餌にする!?)。

 カエルの中には、エッグフィーダと呼ばれる種類がいます(西表島や石垣島に分布するアイフィンガーガエルなど)。エッグフィーダは、親ガエルが卵を産み、それをオタマジャクシに食べさせるという、珍しい子育てをするそうです。もしかすると、サンショウウオが孵化に時間差のある卵を産むことは、サンショウウオならではの子育て方法なのかもしれません。ちょっと強引な推測だと思ったあなた。私もそう思ってまーす。

 なお、一昨日は雨も降り、水温は一気に15℃にまで下がっていました。 昨日はさらに低下して14℃。今朝は13℃にまで落ち込みましたが、帰宅後見ると17℃に。水量が少ないから安定しない。見たところ幼生達はピンピンしているようですが・・・。

2002. 4.23 給餌開始

 もう、自分の目を疑うほど(笑)順調に成長しています。全長は2cmに達し、特に頭部が目立って大きくなってきました。
 本格的な孵化から丸1週間です。ここまで育てば、目に見えるか見えないかのインフゾリアではなく、もう少し大き目の餌を与えるべき時期。こちらのページに、生まれてから1週間ほどは泥を入れてあれば他に餌を与える必要はないと書いてあったので参考にしていたのですが(笑)、まんざらデタラメでもなかったようです。

 そんなわけで、今朝、初めてまともな給餌をしました。与えたのは孵化したてのブラインシュリンプ。新潟県の水族館マリンピア日本海の飼育スタッフの方から、幼生の餌にはブラインシュリンプが適していると教えてもらったことがありましたし、優れた餌だと思います。しばらく観察していましたが、残念ながら食べる瞬間は目撃できませんでした。

冷凍アカムシ

 ブラインシュリンプの孵化には小さなプラケースを使ったのですが、うっかり水槽のライトの上に放置して仕事に出かけたため、帰宅した時には、熱で干からびてしまっていました・・・。ブラインシュリンプの孵化には24時間はかかりますから、すぐに次の準備はできません。そこで、まだ少し大きすぎるとは思いつつも、冷凍アカムシを与えてみることに。解凍したアカムシをピンセットで1匹ずつつまんで、幼生の口元に持っていってあげます。びっくりして逃げ出す幼生もいましたが、狂ったように食いついてくるものも。

 やった!食べた!!
 ピンセットからアカムシを食べてくれてほっとしました。一度餌付きさえすれば、後は、いろいろな餌をピンセットから食べてくれることでしょう。確かに、2cmほどの小さな幼生に1匹ずつピンセットで餌を与えるのは超しんどいです。でも、自分で言うのもなんですが、こういった面倒くさい作業をコツコツとこなす覚悟がなければ、生き物の飼育はお勧めできません。もう少し大きくなれば、スポイトで目の前に餌を噴出してあげれば食べるようになるので、それまでの辛抱です。

 餌を与え始めたので、明日からは水換えも始めます。

バランサーについて

 サンショウウオの幼生は、ウーパールーパーでおなじみの外鰓がいさいがついていますが、その前方、目のやや後ろから、左右一本ずつ髭のようなものが伸びています。これがバランサーと呼ばれる器官です。
 バランサーは日本語では平行桿へいこうかんといい、水中で体のバランスをとるためにあるといわれています。
 孵化してしばらく経つと消えてしまうそうですが、以前幼生を飼育したときは、知識不足でバランサーの存在自体知りませんでしたし、まじまじと観察したのはこれが初めて。今朝、便器にまたがりながら水槽をのぞいた時にその存在に気が付き(笑)、とても感動しました。

卵のう崩壊

 卵のうは日ごとに崩れはじめ、今朝の段階で写真の状態になっていました。この時点で未孵化だった幼生は、卵の中で未発達のまま死んでいました。孵化率は60%ほどだったでしょうか。
 やはり、採取時すでに状態がかなり悪かったことと、輸送中のダメージが響いたのだと思います。この後、崩壊は加速し、夜には原型がわからないほどになっていました。


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2002. 4.29 アレが生えた

 最終的に孵化した数は19匹です。死卵が10個くらいあったので、ひと房の卵数は約30個。おおむね予想どうりの数でした。

順調!


全長2.7cm

 さて、初期の給餌がうまくいったので、もう、どんどん大きくなっています。

 以前幼生を育てたときに冷凍アカムシばかり与えていて、1匹クル病にしてしまった反省から、今回はブラインシュリンプも頻繁に与えるようにしています(今後さらにレパートリーを増やす)。

 幼生は、いつもは水面付近や中層にぼけーっと浮かんだり、底でじっとしてほとんど動かないのですが、ブラインシュリンプを入れてしばらくすると、時折、ビクッ!ビクッ!と動きます。目の前に来たブラインシュリンプを飲み込んでいるのです。


じっと餌がくるのを待つ。

 自分から餌を追いかけることはせず、目の前に来た餌だけを食べるのは幼生も成体も同じ。こんな食べ方ですから、金魚に餌をやるように水槽に餌をばら撒くとムダが多く、水質悪化を招くばかり。生きたブラインシュリンプのように泳ぎ回るものは、放っておいても食べられてくれる(合掌)ので良いのですが、冷凍アカムシなどはピンセットやスポイトで幼生の口元に落としてあげる必要があります。

 なお、食べる量も多くなってきたので、昨晩、スポンジ濾過をもう1つ追加しました。

アレが生えた

 前回ご紹介したバランサーはいつの間にか消え、かわりに別のものが生えてきました。写真の矢印の先にご注目ください。

 これはまさしく・・・手っ!

 こんなに早く生えてくるものだとは。めでたい。以前飼育したときは、もっと育った状態からのスタートだったので、前足の生えるタイミングはわかりませんでした。
 今回、卵のうから育ててみて、発見することがいっぱいです。


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クロサンショウウオの幼生の特徴

 クロサンショウウオの幼生は、とても立派な尾びれを持っており、幅が広く、しかも、かなり前方から広がっていることが特徴です。他のサンショウウオの幼生と見分ける際の参考になります。この特徴も、今回、初めてじっくりと観察することができました。

共食いの季節

 手前の幼生の尻尾の先が欠けています。同じ水槽の中にかじった犯人が・・・。
 1匹ずつ分けて飼うか、このまま同じ水槽で飼い続けるか、迷いましたが、やっぱり私にとって楽な後者を選択することにしました(^^;。できる限り被害を抑えたいので、せめて朝晩2回の給餌はかかさないようにします。

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