2003年5月

2003. 5. 1 自然界での孵化始まる
2003. 5. 8 北海道サンショウウオ紀行
2003. 5.11 ハコネサンショウウオ三昧
2003. 5.26 サンショウウオ観察レポート開始

2003. 5. 1 自然界での孵化始まる

 先日ハコネサンショウウオ幼生の観察に出かけたときに、近くにあったクロサンショウウオの繁殖池も観察してきました。

 クロサンショウウオの卵のうは白濁していて中がよく見えないのが普通ですが、この繁殖池には緑がかった半透明の卵のうも多くありました(透明卵ではない普通の卵のうでも、孵化が近づくと透明になってくる? 注:そういうことはないそうです)。覗いてみるとかなり発生は進んでおり、数日すれば孵化が始まりそうな雰囲気。


霧の中の繁殖池

水面にせり出した枝に、たわわに産み付けられた卵のう

幼生誕生!

 1週間後の4月20日に観察に訪れると、少数ですが孵化が始まっていました。

 卵のうの上に横たわっている幼生を発見(背景の緑色は卵のう)。
 孵化から数時間しか経っていない、まさに生まれたてホヤホヤの幼生と思われます。


孵化後まもない幼生。とてもあどけない雰囲気。

 こちらは、2〜3日前に孵化したと思われます。ぼちぼち水底の微生物を食べ始める頃でしょうか。


孵化から数日経った幼生。紙皿ですくってじっくり観察。
ほおの辺りから1対のバランサーが生えている。

水中の微生物

 幼生を紙皿ですくって観察しているとき、すくった水の中に驚くほどたくさんの微生物がいることに気がつきました。
 ピンピンと跳ねるように動くミジンコの仲間、ウネウネ這い回るワーム状の生き物、クルクル泳ぎ回る微生物。こういう餌をたくさん食べて、自然界のサンショウウオの幼生は健康に育っていくのでしょう。

 我が家で現在飼育中の成体は、すでにかなり成長した幼生を繁殖池で捕まえ、育ててきたものですが、彼らの上陸時の体の大きさは、昨年、卵のうから育てた子たちより、1.5倍以上は大きかったように記憶しています。

 実は、このことが今も心にひっかかり、私を悩ませています。

 昨年幼生を育てるために与えてきた餌は、ブラインシュリンプ、アカムシ、ミジンコ、熱帯魚の人工飼料、そしておやつ程度にミールワームなど。
 こうして簡単に列挙できる程バラエティに乏しく偏ったもので、自然下とは比べるべくもない・・・。この差が、上陸時のサイズの差となって現れたと考えています。
 そして、もしかするとサイズだけでなく、将来の健康にも差が出てくるかもしれない・・・。

 このことはもちろん成体の飼育にも当てはまります。大自然にかなわないのは食べ物だけではありません。温度、湿度、光、水、空気・・・取り巻く環境のすべてがそう。自然観察に出かけると、つくづく思い知らされます。

 言うまでもなく、自然界と同じ条件を水槽内に再現することは不可能なことです。
 飼育者にできることは、自然界をそのまま再現することでなく、飼育する生物にとって何が重要なのか見極め、最低限必要な環境なり餌なりを整えてやることです。
 この「最低限」のハードルを越えることが、水槽内での繁殖にもつながり、また、その生物をより深く理解することにつながっていくのではないでしょうか。

4度目の繁殖チャレンジ【終了】

2003. 5. 8 北海道サンショウウオ紀行

 こっそりと北海道に行ってきました(笑)。

かつてネオテニー個体群が棲んでいた神秘の湖

 国立公園特別区域に静かに水面みなもをたたえるクッタラ湖。
 水質日本1位、透明度日本2位を誇るカルデラ湖で、日本で唯一、エゾサンショウウオのネオテニー個体群が生息していた湖です。明治42年に放卵されたヒメマスに皆食べられてしまい、ネオテニー個体群は既に絶滅したといわれていますが、いつの日か絶対に訪れ、その環境を肌で感じたいと願い続けていました。

 その日がやってきました。

 タクシーでクッタラ湖展望台へ。眼下に広がるクッタラ湖。想像していたよりもずっと大きい!とうとう来ることができたんだと思うと、早くも胸が熱くなった・・・。

 そこから先は通行止めだったため、湖畔まで徒歩で向かいました。


展望台から。憧れのクッタラ湖がそこに!

 すがすがしい山の空気を全身に浴びながら、30分ほどかかって湖畔に到着。

 チップ(ヒメマス)釣りのシーズンには釣り人で賑わうそうですが、今はオフシーズンで、また、通行止めの影響もあってか観光客もほとんどなし。贅沢にも私の独り占めです。

 さっそく手漕ぎボートを借りて湖面に。


手漕ぎボートの上から。

 手を伸ばして水をさわってみると、痛いほどに冷たい!そして・・・なんて、なんて透き通った水なんだろう。

 こんな湖に、エゾサンショウウオのネオテニーは棲んでいたんだ・・・。

 ボートの上で、足を投げ出して横になってみた。風の音と波の音、小鳥のさえずり以外には、何も聞こえない。自分の息づかいさえも聞こえない。まるでクッタラ湖とひとつになったようでした。

 本当にひとつになっちゃうとヤバいので、転覆する前に岸に引き返しました。

キタサンショウウオの生息地、釧路湿原

 キタサンショウウオの棲む釧路湿原を訪れました。

 キタサンショウウオは日本に棲むサンショウウオのうち、唯一、日本以外にも生息し、シベリアにまで広く分布しています。日本では絶滅危惧種であり、釧路市指定の天然記念物でもあります。

 前日に引き続き天候に恵まれ、気持ち良すぎる春の日差しの中、思う存分、湿原散策を楽しみました。

 あわよくば、ひと目卵のうを・・・と思い注意していましたが、さすがにそううまくはいきませんでした。
 センターの職員の方の話によると、早いものはすでに産卵しているが、最盛期はこれからとのこと。


広大な釧路湿原のどこかに、
キタサンショウウオがひっそりと息づいている。

 右の写真にあるモコモコした塊は、ヤチボウズと呼ばれるスゲ類の株で、湿原内でたくさん見ることができます。
 キタサンショウウオは、ヤチボウズの内部にもぐりこんで越冬することがあるそうです。


ヤチボウズ群。おもろい。

 キタサンショウウオには逢えなかったものの、エゾシマリス、カワヤツメ、そしてタンチョウにも逢うことができました。エゾアカガエルの卵塊はいたるところにありました。
 さらに展望台からは、なんと、遠くの湿原を歩く3頭のクマも目撃!!!

エゾサンショウウオの卵のうとの出逢い

 念願のクッタラ湖、釧路湿原を訪れることができて十分幸せだったというのに、旅の途中にもうひとつ最高にうれしい出来事がありました。

 それはエゾサンショウウオの卵のうとの出逢いです。


クリックすると詳細をご覧いただけます。

 北海道から産卵の便りをもらっていたので、ひょっとすると・・・と思わなかったわけではありませんが、まさか本当に見ることができるなんて・・・!

 産み出されて間もないと思われるシワシワのものや、時間が経ってパンパンに膨れたものなど、たくさんの卵のうを観察することができました。

 帰宅してすでに4日が経ちましたが、未だ旅の興奮が冷めません。

2003. 5.11 ハコネサンショウウオ三昧

 各地を旅してサンショウウオの観察をしておられる山椒大夫さんによると、ハコネサンショウウオは、ほとんどの生息地で3サイズが観察できるとのこと。


クリックすると詳細をご覧いただけます。

 ハコネサンショウウオは、幼生が変態を完了するまで、数年を要するそうです。つまり大きさの違いは、主に年齢の違いによるものと思われます。

 沢を注意深く調べたところ、前回は出会わなかった最小サイズの個体を見つけることができ、当沢でも3サイズを確認することができました。

お顔のアップ

 ハコネとクロの顔を比べてみたところ、ハコネは、クロよりも目の位置が顔の正面よりにきていることに気が付きました。


ハコネオ幼生の頭部
 

こちらはクロ幼生の頭部。ずいぶん雰囲気が異なる。

 よく、ヒョウやトラなど肉食獣は、獲物との距離を正確に見定めるため両目が正面に位置していると聞きます。
 「水清ければ魚棲まず」のことわざどおり、ハコネサンショウウオの幼生が棲む清流は餌となる生物量が止水に比して少ないため、より確実に捕食する必要から、このような特徴を備えているのでしょう。

 また、止水性であるクロに比べて、流水性のハコネは外鰓が小さい。沢の水は温度が低く空気の巻き込みも起こるため、酸素が豊富で大きな外鰓が必要ないのです。止水性でも、エアレーションを強化して酸素を十分供給すると外鰓が小さくなり、逆に減らすとフサフサと発達してくることが知られています。

指先のアップ

 このツメで、沢の流れに逆らってものにしがみついているわけですね。アップで写真に撮ってみると、予想以上の鋭さ。こりゃすごい。



←こちらはクロ幼生の軟弱な指先(笑)。

ハコネ幼生の指先。たくましすぎ。

ハコネサンショウウオ・ギャラリー

 この日の観察では、天気が良かったこともあり、たくさんの幼生を見つけることができました。その一部を紹介します。


見ーーーっけ!


水中の石をはぐって濁りが澄むと、幼生の姿が現れる。

この沢最大クラス。やはり尻尾は切れている。


ボーっとしているもの、逃げ回るものなど様々。

 観察場所は山間のとても小さな沢です。踏み荒らしたりしないよう十分に気をつけているつもりですが、あまり頻繁に同じ場所に観察に行くと、徐々に生息環境を乱してしまうのではないかと不安を感じていました。しかし、この日、その沢が流れ込む本流の上流側にも幼生が多数生息していることを確認!他の支流から流されてきたものや、本流の上流部にも産卵場所がある可能性を意味します。
 観察フィールドが付近一帯に広がりました!

天敵その2

 前回紹介したヤゴに引き続き、天敵の代表格サワガニを発見。なぜか前回の観察では1匹も見なかったが、今回はたくさん見つけることができました。こいつは強敵だ・・・。

 しかし、山椒大夫さんはベッコウサンショウウオの幼生がサワガニの子供を食べている驚愕シーンを目撃されてます。持ちつ持たれつというか・・・。野生だなぁ〜。

おまけ

 水中の枯れ枝の下に、異様に皮膚がブヨブヨになったカエルを発見(この写真では分かりにくいが・・・)。

 図鑑等で、このように皮膚がたるんだ写真が掲載されているのは、ナガレタゴガエルかチチカカミズガエル(笑)くらいです。(水中に長くいられるよう、皮膚呼吸の面積を増やすため皮膚がたるむのだとか。)

 もしや前回抱接を観察できたのは、タゴガエルじゃなくてナガレタゴガエルだったのでしょうか!?

 タゴとナガレタゴは、水かきの発達具合で容易に区別が付くそうです。ご覧のとおり大した水かきではありません。やはりタゴガエルで正解のようです(よね?)。

2003. 5.26 サンショウウオ観察レポート開始

 観察重視で取り組んできた4度目の繁殖チャレンジは、知識もない中で「何とか産ませたい」というこれまでの幼稚なチャレンジに比べ、とても得るものが大きかったです。特にオスの生殖結節が確認できたことや、冬眠なしでもメスの卵管が発達することが分かったことは、大きな前進でした。

 今回よりコーナーの名称を「サンショウウオ観察レポート」と改め、来春の繁殖を見据えたレポートをお届けしていきたいと思います。

繁殖池のその後

 前に紹介した某村の繁殖池に、5月5日、17日、24日と足を運びました。何しろ家から近いもんで。

5日の様子

 すっかり孵化は完了し、卵のうは崩壊を始めていました。

 幼生たちは、すでに針の先のような前足を生やし始めていました。同じ両生類でも、カエルは後足から先に、サンショウウオは前足から先に生えるのはどうしてなんでしょ?
 カエルは大きくジャンプしたり、泳いだりするのに使うため、体に比してどデカい後足を持っています。早い段階で外に出した方が発達に有利だからではないでしょうか?人間の男の子だってはやくムケたほ・・・おっと。

 ものの本で、初期の両生類の図を見ると、ちゃちい後足をしています。きっと、もともと両生類は前足から先に生えてきた。カエルの後足が先に生えるようになったのは、カエルが独自の進化を遂げた結果のように思えます。(妄想おわり)


役目を終えた卵のうは、静かに朽ちてゆく。
ところどころに小さな幼生の姿が見られる。

5月5日。

17日の様子

 前足は、針状から、ヒレ状へと成長していました。また、バランサーはなくなっていました。

 5日の写真と比べると、顔つきが少し青年っぽく?なってきたように感じられます(同一個体ではありませんけど〜)。


5月17日。

 同じ日にちょっと面白い個体を発見。→

 まるで生まれたばかりのような体型ですが、池にあった卵のうの崩壊はすでにかなり進んでいたことから、最近生まれたものとは考えにくい。これが、他の幼生の餌となるために成長が抑制された幼生なのかもしれない。もし最近生まれたのだとしても、初めに孵化したものとはひと月ほども時期にズレがあることになります。どちらにしても他の幼生の餌になる可能性は大きいといえます・・・。


やけに小さい幼生(上)。
下は密かなブームを呼びそうな?ミズムシ。

 この日、ミズムシを数匹採取してきました。掲示板のほうで、ミズムシは増えやすく餌として適しているとの情報をいただいています。来年、クロサンショウウオの繁殖に成功しても、餌のほうは安心です(気が早っ!)。

24日の様子

 近所まで用事で出かけたついでに、またまた繁殖池に寄ってきました。

 この繁殖池は、車を降りてしばらく山道を上ったところにあるのですが、はじめの頃はゼイゼイ言いながら上っていたのが、今では、走って駆け上がれるほどになりました(笑)。何度も通ったおかげで体力アップ!

 繁殖池は、このところの晴天続きの影響で、水位が激減していました(深いところでも5cm弱)。そのため、池の中の幼生密度がすごいことに。
 熾烈な共食いが予想されます。そして、強いものだけが生き残る・・・。このまま干上がって一匹も残らなかったりして(汗)。

 つい出来心で、1匹、手にすくいとってみました。外鰓が体に張り付くと、尻尾の長いただのオタマジャクシのようです。


5月24日

あまり長くさわっていると弱っちゃう。

(おまけ) モリアオガエルの卵塊発見


 岩手県のモリアオガエルは国の天然記念物。その繁殖池と、福島県の繁殖池が、同じく国の天然記念物に指定されています。
新潟県には案外多くいるようで、卵塊を見る機会はわりと多いです。

 17日の観察時に、モリアオガエルの卵塊を見つけました。ずっと池の中ばかり見ていて上のほうを見ていなかったので、ふと気が付いてビビりました(笑)。

 整髪料のムースに似た泡状の卵塊は、池にせり出すように生えている木に産みつけられており、大きさはハンドボールより少し大きいくらい。ベタベタしているのだろうか・・・?興味を押さえきれず、恐る恐る触れてみました。
 意外にも表面はしっかりと乾いていて、丈夫な皮膜が形成されています。カマキリの卵のようです。カマキリの卵と違うのは、内部にはしっかりと水分が保持されていて、持ち上げるとずしりと重いこと(時間と共にだんだん乾いてきて、少〜しずつ軽くなる)。

 我が家のクロサンショウウオたちの故郷である、小千谷市の繁殖池にも行ってきました。次回レポートします。

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